
EMOTION the Best 魔法のスター マジカルエミ DVD-BOX 2 [ 小幡洋子 ]
【アニメのタイトル】:魔法のスターマジカルエミ
【制作】:スタジオぴえろ
【アニメの放送期間】:1985年6月7日~1986年2月28日
【放送話数】:全38話
【監督】:安濃高志
【シリーズ構成】:小西川博、渡辺麻実
【キャラクターデザイン】:岸義之
【音楽】:奥慶一
【作画監督】:岸義之、加藤鏡子
【美術監督】:三浦智
【音響監督】:藤山房延
【演出】:古川順康、立場良
【オープニングアニメーション】:もとやまゆうじ
【エンディングアニメーション】:古瀬登
【放送局】:日本テレビ系列
●概要
■ 鏡の中のもうひとりの私
日常と夢の間をさまよう少女の物語
1985年6月から1986年2月にかけて放送されたテレビアニメ『魔法のスターマジカルエミ』は、「ぴえろ魔法少女シリーズ」の第3作として登場した。本作は『魔法の天使クリィミーマミ』『魔法の妖精ペルシャ』に続き、魔法と少女の成長を織り交ぜたファンタジー作品だが、他のシリーズとは一線を画す独自の世界観と情緒を持っている。キラキラした変身や戦いの描写よりも、日常の機微と心のゆらぎに焦点を当てた点において、アニメ史においても異彩を放つ存在といえる。
■ 魔法よりもリアルが光る
香月舞という少女
主人公の香月舞(かづき まい)は、一見すると平凡でどこにでもいそうな少女。しかし、彼女の心の奥底には、マジシャンとして人々を驚かせたい、というまっすぐな夢が息づいている。そんな舞が、ある日鏡の妖精「トポ」と出会い、魔法の力を授かることで、もうひとりの自分――マジカルエミへと変身を遂げる。
だが、エミという存在は舞の理想像ではあっても、現実そのものではない。本作では、魔法によって得られた姿と、地道な努力を積み重ねる本当の自分とのギャップが鮮明に描かれ、観る者の胸にリアルな痛みと希望を同時に届けてくる。舞の葛藤は決して大仰なセリフで語られることなく、表情や間合い、さりげない会話に宿る。それゆえ、視聴者の心にそっと寄り添うような温かさを残すのだ。
■ マジカルエミのステージ
華やかでありながら孤独
エミとして舞台に立つ香月舞は、誰もが見とれるようなパフォーマンスを披露する。マジックや歌に彩られたその姿は、まさに夢のような存在だ。けれど、その舞台の裏では、舞自身が抱える「自分らしさとは何か」「他人に認められるとはどういうことか」という根源的な問いが深く掘り下げられていく。
本作は敵キャラやライバルといった対立軸をほとんど排しており、戦いによる成長よりも、内面の模索に時間を費やしている。これは、魔法少女もののセオリーに挑む意欲的な構成でもあり、80年代のアニメとしてはかなり実験的な試みといえる。
■ トポと鏡の象徴性
魔法という名の「可能性」
舞に魔法を与える存在である「鏡の妖精トポ」は、本作における“魔法の管理者”ではなく、“可能性の媒介者”として登場する。彼は魔法を与える一方で、それが万能ではないこと、そして安易に頼るものではないことを示唆する役回りでもある。
舞が鏡を見るたびに自分の姿を見つめ直すように、トポの存在は、彼女の夢と現実の交差点に立つガイド的な存在だ。トポはしばしばおちゃらけた態度をとるが、その本質は深く、舞が“本当の自分”を見出す過程において、重要な役割を果たしていく。
■ 魔法は飾りではない
作品が提示した「成長」のあり方
『魔法のスターマジカルエミ』は、魔法の力で成長や成功を得るような展開を選ばなかった。むしろ、魔法は主人公が抱える悩みや迷いを明るみに出すための“鏡”として機能している。変身によって何かを乗り越えるというよりも、変身したからこそ見えてしまった苦しさや葛藤――それがこの作品の核である。
つまり本作が描く成長とは、失敗を乗り越えるとか、力を得て勝つといった直線的なものではなく、自分を知り、受け入れ、地道に積み重ねていくことの大切さを伝えているのだ。
■ 見えない敵、不在のライバル
「戦わない魔法少女」の誕生
本作の大きな特徴のひとつが、「敵対関係」の完全排除である。ライバルもいなければ、悪の存在もない。ただ舞自身と彼女の周囲にいる家族や仲間、観客たちとの関係性だけが物語を形づくっていく。対決構造がないことで、視聴者はより一層、主人公の内面世界に意識を向けることになる。
この構成は、一見地味に思えるかもしれない。しかし、他者との関係を通じて自己を見出すという意味では、非常に豊かなドラマが静かに展開されている。
■ 制作陣と映像美術の工夫
本作の監督を務めたのは、ぴえろ魔法少女シリーズの中心人物である安濃高志。彼は、少女たちの心のひだを丁寧に描き出す手腕に定評があり、本作でもその演出力が存分に発揮されている。色彩設計や背景美術、キャラクターのちょっとした仕草にいたるまで、すべてが舞の感情とリンクするように構成されている。
また、主題歌や挿入歌にも力が注がれており、ステージシーンの演出には実写に近い臨場感とリズムが加えられている。歌がただの演出ではなく、舞の心情やストーリーの節目を象徴する役割を担っている点も見逃せない。
■ 放送後の展開
記録よりも記憶に残る名作へ
『魔法のスターマジカルエミ』は、放送当時にVAPから一部エピソードがビデオ化されたほか、90年代にはLD・VHS・DVDがバンダイビジュアルから発売され、2011年には待望のDVD-BOXも登場した。さらにOVA『艶姿 魔法の三人娘』や『魔女っ子クラブ4人組 A空間からのエイリアンX』などでの再登場もあり、ファン層の記憶に色濃く刻まれている。
また、メインスポンサーであったバンダイからはマジカルステッキやぬいぐるみなどの関連グッズも発売され、文房具類はセイカノート(現サンスター文具)から展開された。だが、商品展開の派手さに比して、作品そのもののテーマは静謐で、むしろ大人になってからその良さを再認識するという声も少なくない。
■ 魔法は心の中にある
『魔法のスターマジカルエミ』は、魔法のきらめきと等身大の少女のリアルな葛藤を美しく交錯させた作品だ。派手さや対決構造を排しながらも、心の成長と向き合うストーリーは、視聴者に深い余韻と感動を与え続けている。
この作品が語る「魔法」は、特別な力ではなく、誰もが心に持っている小さな希望や信念なのかもしれない。香月舞のように、自分を信じて歩みを止めなければ、その魔法はきっと現実の中でも輝き続けるのだろう。
●あらすじ
■ マジックに憧れる少女、香月舞
香月舞は、小学五年生。周囲と比べて特別に器用というわけではなく、どちらかといえば少し不器用な女の子。しかし彼女の胸には、強くてまっすぐな「夢」が息づいていた。それは、マジックで人を驚かせ、喜ばせる本物のマジシャンになること。
彼女の祖父・香月昇は、地域で活動しているマジック劇団「マジカラット」の座長。舞も劇団の雑用をしながら舞台の裏側を見て育ち、いつか自分も光の中で拍手を浴びたいと願っていた。けれど、何をやってもうまくいかず、マジック道具も手に馴染まない。自信をなくしかけていた舞は、ある日、こてまり台へと引っ越す途中で、思いがけない“出会い”を果たす。
■ 鏡の中の妖精・トポとの契約
引っ越しの最中、ひょんなことから舞は古びた鏡をのぞき込み、不思議な存在と目を合わせた。ふわふわと宙を漂う、小さな妖精のような生き物。その名はトポ。鏡の精霊である彼は、夢を強く願う者の前にだけ姿を見せるという。
トポは、舞の“本気の願い”を聞き入れ、一つの提案をする。「君に魔法を与えよう。ただし、それをどう使うかは君の自由だ」と。そうして舞は、魔法の力を秘めたブレスレットを手にする。それは、彼女を“もうひとりの自分”――天才マジシャン「マジカルエミ」へと変身させる鍵だった。
■ マジカルエミ、ステージに降り立つ
ある日、「マジカラット」の本番中にトラブルが発生。出演者が舞台に立てなくなり、ショーは崩壊の危機に瀕する。舞は恐る恐るブレスレットを握り、魔法の言葉を唱えた。すると、まばゆい光の中から現れたのは、大人びた美しい姿のマジシャン――マジカルエミだった。
堂々たるステージング、魔法のようなマジック、そして人々を魅了する微笑み。彼女は一夜にして観客の心を掴み、劇団のステージを大成功へと導いた。その様子をたまたま目にしていたテレビ局のプロデューサーは、「彼女を番組に出したい!」と名乗り出る。
舞自身の意思とは裏腹に、マジカルエミはテレビへ、そして芸能界へと足を踏み入れることになる。こうして、香月舞=マジカルエミの二重生活が幕を開けた。
■ 憧れの舞台と、心のすれ違い
テレビの世界では、マジカルエミは“新星”として話題をさらい、アイドルとしての人気を急上昇させていく。けれど、舞の心は徐々に曇り始める。華やかさの裏で、自分が演じている“天才マジシャン”という像が、本当の自分とはかけ離れていると感じるようになっていくからだ。
周囲はエミの才能を讃えるが、それは舞自身の努力や成長ではなく、“魔法”の力によるものだった。そんな中、劇団「マジカラット」が若手マジシャンの登竜門となる「エミリー賞」を主催することになり、舞もエミとして出場することに。結果は当然のように優勝。しかし、勝利に喜ぶことができなかった。
「これは、私の力じゃない」
受賞後の帰り道、舞の胸には、言葉にできない空虚が広がっていた。
■ 伝説のマジシャン、エミリー・ハウエルとの邂逅
そんな折、舞は偶然にも、若かりし日の伝説的マジシャン「エミリー・ハウエル」の舞台映像を見る機会を得る。華麗で完璧な演技の裏にあった、汗と涙、失敗と練習の積み重ね。天才と称された彼女もまた、地道な努力を重ねた一人の“普通の女性”だった。
その事実に触れたとき、舞の中で何かが変わる。「私は、魔法に頼らず、自分の手で夢を掴みたい」――そう決意した舞は、トポに“魔法を返したい”と申し出る。
■ 最後のステージ、別れのとき
舞は、大賞受賞記念の公演を“エミとしての最後の舞台”にすると決めた。そしてその舞台は、これまで以上の熱気と感動に包まれながら、静かに、そして力強く幕を下ろす。
舞台裏に戻った舞は、トポに微笑みながらブレスレットを差し出す。「ありがとう。あなたのおかげで、私は夢を見て、その価値を知ることができた」――そう語る舞に、トポは何も言わずにうなずき、ゆっくりと姿を消していった。
それは、魔法との別れであり、もうひとつの自分・マジカルエミとの永遠の別れでもあった。
■ ひとりの少女の本当の旅立ち
魔法を手放した舞は、再び“自分”として日常へ戻る。けれどその瞳には、かつてよりもずっと強い光が宿っていた。もう、迷わない。彼女は“天才マジシャン”ではなく、“努力するマジシャン”として新たな一歩を踏み出したのだ。
ステージの中心で輝いていたエミの記憶は、舞の心に今も残っている。しかしその記憶に頼るのではなく、それを超えるために、香月舞は歩き出した。
●登場キャラクター・声優
●香月舞
声優:小幡洋子
香月舞は、マジシャンへの強い憧れを胸に抱きながらも、自分の手先の不器用さに悩む11歳の少女です。新しい町「こてまり台」へ引っ越してきたことをきっかけに、魔法の力と出会い、その運命が大きく変わり始めます。鏡の妖精トポから魔法のアイテム「ハートブレス」を授かり、憧れのマジシャン“マジカルエミ”に変身して活躍する日々へと足を踏み出します。
学校生活では明るく元気なムードメーカーでありながらも、内心は努力家で繊細な一面もあり、恋愛面では年上の結城将に対して微かな想いを寄せています。その一方で、同級生の武蔵の好意にはまったく気づかず、どこか鈍感さも持ち合わせた愛すべき主人公です。
●トポ
声優:龍田直樹
トポは、舞に魔法の力を授けた異界の存在。光り輝く球体のような姿で登場するも、眩しさが舞に不評だったため、現在はピンク色のモモンガのぬいぐるみに宿って彼女と行動を共にしています。
その見た目とは裏腹に、非常におしゃべりでユーモラスな性格。マジカルエミとしての活動をサポートする一方で、岬のおもちゃとして扱われる場面も多々あり、視聴者に笑いを届けてくれる存在です。25話では、監査役のような後輩妖精・ピラミーが登場し、彼の活動が精霊社会でも評価対象となっていたことが明かされます。
●香月順一
声優:納谷六朗
舞の父であり、「コンガール」というクッキー専門店を経営する腕利きのパティシエ。過去にマジシャンであった妻・陽子との結婚条件として「マジック引退」を求めたほど、魔法や舞台芸に対して否定的な立場を取っています。
その理由は、彼自身が極度の不器用であることと無関係ではなく、舞の不器用さもこの父譲り。とはいえ、娘や家族に対する愛情は深く、その不器用な姿はどこか哀愁を帯びたユーモラスな存在として描かれています。
●香月陽子
声優:青木菜奈
舞の母で、かつてはマジック劇団「マジカラット」の看板スター。家庭に入った今でも舞台への未練を捨てきれず、機会があればステージに立とうとするなど情熱は健在。陽子のキャラクターは、夢を諦めきれない女性として描かれ、娘の舞にもその熱意が受け継がれていることが分かります。
陽子の舞台愛は、時に順一との衝突を引き起こしますが、それも家族の一つの絆の形として物語に温かさを添えています。
●香月岬
声優:三田ゆう子
舞の弟で、まだ幼さの残る4歳児。特徴的な話し方で語尾に「~でしゅ」をつけるのが印象的。姉・舞のことを慕い、家庭内のムードメーカー的存在として、物語に柔らかな雰囲気を与えてくれます。彼の視点から描かれる日常シーンは、視聴者にほっこりとした余韻を残します。
●結城将
声優:水島裕
こてまり学園の高等部に通う高校生で、舞のいとこ。アメリカへ渡ったマジシャンの両親に代わって、中森家に預けられています。クールで人見知りな性格ですが、舞に対しては保護者のような温かさを持ち、彼女の成長を陰ながら支える存在です。
マジックの才能がありながらも、それを好ましく思っていない彼の姿は、舞との対比として描かれており、ボクシングへの情熱という別の夢を追う姿が印象的です。
●小金井武蔵
声優:伊倉一恵
舞のクラスメイトで、マスコミ関係者の息子。見た目は地味ながらも心優しく、舞に好意を抱き続けている様子が微笑ましい少年です。様々なイベントで舞を応援し、時にはショーの応援団を作るなど一途な想いを行動で示します。
エミと舞の関係に何度か疑問を抱く場面はありますが、彼なりの理屈で納得しようとする素直さもあり、どこか応援したくなるキャラクターです。
●松岡
声優:速水奨
将が所属するボクシング部のリーダー的存在であり、精神的な支柱とも言えるキャラクターです。時には厳しく、時には優しく、部員たちの成長を見守る立場にいます。将の行動に不満を漏らしながらも、その才能や真剣さを理解している良き上司でもあります。
●中森晴子
声優:峰あつ子
舞の祖母で、かつては舞台で活躍していたものの、現在は劇団マジカラットの辣腕プロデューサーとして辣腕を振るっています。強いリーダーシップと妥協しない意志を持ち、頑固で短気な一面もありますが、その芯には家族や団員たちへの深い愛情があります。
家族内では一種の「女帝」として君臨し、マジックの路線を巡って夫とも激しい議論を交わす場面が多々あります。
●中森洋輔
声優:八奈見乗児
晴子の夫で、舞の祖父。劇団マジカラットの創設者であり、年齢を重ねても現役にこだわる老マジシャンです。ただし実権はすでに妻に握られており、自身はコレクターとして日々を楽しんでいます。
劇団の方向性に対して意見を述べる場面もありますが、最終的には新しい世代の夢を尊重し、自ら「マジックスクール」を立ち上げようとするなど、未来を見据える柔軟な人物です。
●主題歌・挿入歌・キャラソン・イメージソング
●オープニング曲
楽曲名:「不思議色ハピネス」
歌唱:小幡洋子
作詞:竜真知子
作曲:山川恵津子
編曲:山川恵津子
■ 全体的なイメージと印象
軽快でありながらも夢見るような浮遊感を持ったサウンドが特徴。イントロから心躍るメロディラインが飛び出し、まるでパラシュートのようにふわっと羽ばたく感覚が心を引きつける。Aメロ・Bメロでは恋する気持ちが七色にきらめく様子が音で表現され、サビに向けて一気に開放感が広がる構成。魔法少女・エミが登場するアニメ本編とぴったりマッチし、作品の世界観を音楽面でもしっかり支えている。
■ 歌詞の魅力
歌詞冒頭の「つかまえて マイ・ハピネス 恋は不思議色」は、主人公が夢と魔法を掴もうとする強い意思を表現。一方で「パラシュートみたい 突然に」「風に流されて 行かないで」などのフレーズは、感情が揺れ動くセンシティブな一面も映し出す。七色のカードや赤いハートの描写は、魔法と恋という二つのキーワードを鮮やかに描写。恋することで人は変わる──そんな普遍的なメッセージが、元気で前向きなトーンの中にしっかりと息づいている。
■ 作曲・編曲の工夫
山川恵津子による作・編曲は、メロディと和音の配置に遊び心がありつつも統一感があり、70~80年代アニメソングらしい一体感がある。イントロのシンセとストリングスの重なりは、魔法が目覚める瞬間の煌めきを音で表しているかのよう。Aメロから徐々に音の厚みを重ねつつ、サビで一気にフルアレンジへ展開する構成は、聴き手の胸の高鳴りをうまく引き出す仕掛け。アルバム版では伊藤銀次による別アレンジも存在し、異なる表情を楽しめる作品となっている。
■ 小幡洋子による歌唱
小幡洋子は明るく澄んだ声で、魔法少女らしい純粋さと情熱を同時に届ける。高音部でもしっかりと響き渡り、まさに「マイ・ハピネス」を掴もうとするエミそのもの。声質には甘さと芯の強さが共存し、歌詞の“恋の揺れ”もリアルに伝わってくる。歌い方にノスタルジックさと希望が滲んでおり、聴き終わると自然と笑顔になるパワーがある。
■ 視聴者からの感想
視聴者の反応では、まず「イントロを聴いただけで当時の映像やシーンが蘇る」「恋と魔法の両方を感じさせてくれるアニソンの名曲」といった声が多く見られる。
「七色のカード」や「赤いハート」といった歌詞のモチーフが可愛らしく、魔法少女ファンの心を確実につかんで離さないといった評価も。
また、歌唱に関しては「小幡洋子の清潔感ある声がエミのキャラクター性にぴったり」という意見も。時を経ても愛され続ける楽曲として、ファンコミュニティでは「今聴いても胸がキュンとする」「ライブカバー映像を観て初めて原曲の良さに気づいた」といった声がSNSや掲示板で多数寄せられている。
●エンディング曲
楽曲名:「あなただけ Dreaming」
歌唱:小幡洋子
作詞:竜真知子
作曲:山川恵津子
編曲:山川恵津子
■ 全体的なイメージと印象
夕暮れ時の窓辺で静かに想いを募らせる、少しセンチメンタルなムードを持つミディアムバラード。イントロは優しいアコースティックギターと柔らかいシンセパッドの重なりが心地よく、聴く者をそっと包み込む。全編を通して温かいがどこか切ない余韻が漂い、物語の余韻を引き立てるエンディングテーマにぴったりな、儚げでロマンチックな雰囲気を持っている。
■ 歌詞
主人公・舞の淡い片想いを夕焼けの情景とともに描写。
「夕暮れの窓でひとり ほおづえをついている」
「イニシャルを書いて消した 水色のびんせん」
など、日常の中のささいな行動に込められた恋心が、静かに心を震わせる。繰り返される「Dreaming」のフレーズが、叶うかどうか分からないけれど夢見続ける気持ちを優しく包み込み、聴き終えた後も心に優しい余韻が残る。
■ 作曲・編曲の構成
山川恵津子の作編曲は、控えめな伴奏の中に温度感をうまく盛り込んでいる。ギター、ピアノ、ストリングスが重なり合いながら徐々に厚みを増す構成で、サビに向かうごとに感情が静かに高まる設計。アレンジは抑えめながら、その分一音一音に意味が込められ、ラストに向けてほのかな強さを帯びる展開が胸に染みる。
■ 歌手の歌唱
小幡洋子は澄んだ、透明感ある声色で、舞の内面を丁寧に表現。高音部から低音部まで力みなく自然に歌い上げ、さりげない抑揚が感情の揺れを伝える。特に「私だけ映して笑いかけて」といったフレーズでは、当てどない恋する気持ちがにじむような歌い方が心に響く。
■ 視聴者の感想
ファンの声には以下のような内容が多く見られます:
「夕焼けの情景とともに心にジンとくるバラード」
「優しい歌声が舞の不安と希望をそのまま伝えてくれる」
「シンプルなのに、心がじんわり温まる余韻がたまらない」
当時アニメを見ていた人々からは、「エンディングで流れるたびに胸がときめいた」「今聴いても夕暮れの風景と一緒に心に染み込む」といった声もあり、世代を超えて愛される一曲になっています。
●挿入歌
曲名:「南国人魚姫」
歌唱: 小幡洋子
作詞: 森雪之丞
作曲: 伊藤銀次
編曲: 伊藤銀次
■ 全体的なイメージと印象
「南国人魚姫」は、南の島に伝わるおとぎ話のような、幻想とロマンを詰め込んだ一編の小説を読むかのような楽曲です。太陽の下で煌めく海、風に揺れるヤシの葉、そしてどこか物悲しい記憶を抱えたマーメイドが、聴く者を夢の中へと誘います。音の構成は、軽やかでありながら郷愁を感じさせる南国調のアレンジが特徴的で、日常からふと解き放たれるような浮遊感をもたらします。その独自の情緒が、物語の挿入歌として作品世界と見事にシンクロしており、聴くたびにマジカルエミの魔法にかけられたような感覚を覚える一曲です。
■ 歌詞
森雪之丞による詩世界は、詩的かつメルヘンチックな要素に満ちており、「人魚姫」という幻想的なモチーフを巧みに活かしています。言葉の一つひとつが、まるで海辺に打ち寄せる波のように柔らかく、しかし時に切なさを含んで胸を打つのです。主人公の淡い恋心や憧れといった内面の揺れを、人魚の伝説に投影させる構成は見事で、「夢を見てはいけない」と思いつつも、夢見ずにはいられない少女の心を写し出しています。歌詞はストーリーを直接語るわけではありませんが、マジカルエミ=香月舞の心情とどこか重なり合っており、聴き手は作品のテーマである“成長と憧れ”を自然と感じ取ることができます。
■ 作曲・編曲
伊藤銀次によるメロディーは、どこか懐かしさを感じさせつつも洗練されており、ポップスとアイランド・ミュージックの境界を行き来するような心地よさがあります。イントロではゆったりとしたリズムにリゾート感が漂い、そこから滑らかに旋律が立ち上がる展開が非常に印象的です。編曲も過度に派手になることなく、必要最小限の音数で情景を描き出すセンスの良さが光ります。特に、間奏部分に差し込まれるスチールドラム風の音色や柔らかなストリングスは、南国の情景と人魚の幻想をうまく融合させ、音によって一つの物語を編んでいるような印象を与えます。全体として、劇伴と主題歌の中間のような役割を果たす構成となっており、アニメーションとの相性も非常に高いです。
■ 歌手の歌唱
小幡洋子の澄み切った歌声は、この楽曲の持つ幻想的な雰囲気を見事に引き立てています。声質は透明感にあふれ、どこか無垢さと憂いを併せ持っており、「人魚姫」という存在のイメージにぴったりと重なります。彼女の歌い方には、繊細な表現力があり、特にサビでの伸びやかさと、ブレスの間に見せるかすかな揺れは、まるで人魚のささやきのように耳に残ります。また、全体を通して過剰な感情表現を控え、あくまでも楽曲の世界観に寄り添った穏やかな抑揚で歌い切る姿勢が、作品への深い理解を感じさせます。聴く人の心にふわりと寄り添うような、優しい歌声が印象的なパフォーマンスとなっています。
■ 楽曲に対する感想
放送当時、「南国人魚姫」はエピソード中の印象的な場面で流れるたびに視聴者の心を掴みました。その物悲しくも美しいメロディーは、ファンタジーアニメでありながらどこかリアルな心情を描いていた『マジカルエミ』の世界にぴったりと寄り添い、多くのファンの記憶に残っています。特に、舞の心の成長や苦悩を描くシーンで使用されたことで、この楽曲が単なる挿入歌ではなく、物語の語り部のような存在として機能していたのが大きな魅力です。
また、当時のアニメソングとしては異例なほど大人びた雰囲気を持っており、子どもだけでなく大人の視聴者層からも「歌詞が深い」「メロディーが美しい」と高い評価を受けました。ファンの間では「もっと注目されるべき名曲」として語られることも多く、アニメのサウンドトラックやベストアルバムにおいても根強い人気を誇っています。
さらに、小幡洋子の儚さを帯びた歌声が、後年「隠れた名シンガー」として再評価されるきっかけの一つにもなり、楽曲としての完成度も含めて非常に価値ある一曲と位置づけられています。長い年月を経た今でも、ふとした瞬間にこの歌が頭をよぎるというファンの声も少なくありません。
●ミュージッククリップ
曲名:「風のinvitation」
歌唱: 太田貴子
作詞: 柚木美祐
作曲: 菊池圭長
編曲: 中山紀昌
■ 全体的なムードと雰囲気
「風のinvitation」は、澄んだ空気と軽やかな風を纏った爽快なメロディが印象的な1曲です。アニメ本編とは独立したミュージッククリップ形式で収められ、35話以降の映像特典としてDVDに収録されました。涼やかなアコースティックギターと絶妙なストリングスのタッチが、風が頬を撫でるような清涼感をもたらします。全体を貫く軽快なリズムは、作品における日常の優しさや舞の成長の気配を音から伝えるような構成です。
■ 歌詞について
柚木美祐の作詞は、「風」と「 invitation(招待)」というタイトルが示すように、「心を開く」「新しい景色へ踏み出す」イメージを重層的に描きだしています。例えば、「そよ風が誘う景色」「扉の向こうに希望の光」といった描写がストレートかつ情景的に展開され、「動き出す勇気」をそっと後押しするような柔らかい励ましを感じさせます。その詞世界は、魔法少女として変身と現実の狭間で揺れる舞の心とリンクし、視覚と聴覚の両面で物語の余韻を深めています。
■ メロディと編曲
菊池圭長のメロディは、爽やかなサビへの登りが美しく設計されており、聴くほどに「風をまとった自分」が重なってくるような感覚を持ちます。中山紀昌の編曲は、アコギ・ストリングス・パーカッションが調和し、自然景色のなかで軽やかに歩くようなアレンジが施され、特にブリッジ部分のストリングス導入が感情の起伏を巧みに演出します。また、リバーブを軽く効かせたギターが、風が遠くへ抜けていくような余韻を残し、映像クリップとの親和性も高いです。
■ 太田貴子の歌唱
太田貴子の歌声は、透明感と伸びのある声質が最大の魅力。軽やかなテンポのなかでも、表現の丁寧さが息づいており、サビでは声量を絞らず自然に広がる伸びを見せて、歌が主人公自身の呼びかけのように聴こえます。中音域の温かみが、リスナーの内側に寄り添うようで、歌詞のメッセージに強く共鳴します。イントロの静かな語りかけから、徐々に高まる感情のピッチには、舞の変化と類似する物語性を感じさせます。
■ 聴き手の反応と評価
このクリップ楽曲は、放送当時は映像特典として主役級に注目されていたわけではありませんが、ファンの間では「作品の後味を爽やかに締めくくる一曲」として愛されています。SNSやファン掲示板では、
「風を感じるような歌で、エミの世界がさらに鮮やかに広がった気がする」
といった感想が見られ、また、後年「もっと評価されるべき隠れ名曲」として再注目されています。日常回や成長の結末を描いた本編の余韻を引き伸ばすように、この楽曲が優しく余韻を奏でる構造が、リスナーに静かな余韻を残します。
●アニメの魅力とは?
■ 不器用な少女・香月舞のリアルな足取り
主人公・香月舞は、明るくて素直な性格の少女ながら、生まれつき手先が不器用という弱点を抱えています。マジック劇団「マジカラット」を主宰する祖父の影響でマジックに憧れているものの、理想と現実のギャップに悩む日々。そんな彼女が、ある日鏡の世界に迷い込み、不思議な妖精・トポと出会うことで物語は大きく動き出します。
魔法の力を得た舞は、理想の自分の姿――華麗にマジックをこなす天才マジシャン「マジカルエミ」として変身できるようになります。しかし、それは単なる夢の実現ではなく、「現実の自分」と「理想の自分」とのギャップにさらされ続ける日々の始まりでもありました。
この「等身大の少女の心の葛藤」こそが、『マジカルエミ』の物語に深みをもたらしています。変身できたからすべてうまくいく、という単純な話ではないのです。
■ ぴえろ魔法少女シリーズとの違い
日常の積み重ねに光を当てた構成
『マジカルエミ』は前作『クリィミーマミ』や『ペルシャ』と比較して、より一歩現実に近いテーマが前面に出されています。派手な魔法で世界を救うわけでも、悪役とバトルを繰り広げるわけでもありません。
この作品は「地に足のついた魔法少女アニメ」と言っても過言ではなく、変身して得た能力も決して万能ではなく、マジックやステージ演出といった人の目を騙す「手品」の範疇に留められています。この設定がリアリティを生み、現代の視点で見ると逆に新鮮に映る要因となっています。
特に、香月舞がマジカルエミとして成功すればするほど、自分自身との乖離に悩む姿は、思春期のアイデンティティ形成の困難さを見事に象徴しており、大人になってから再視聴するとさらに深く刺さる内容となっています。
■ 圧倒的なビジュアルと映像演出の巧みさ
アニメーションとしての完成度も非常に高く、特にステージシーンの作画には当時としては異例のリソースが注ぎ込まれています。マジカルエミが披露するマジック演出は、きらびやかな照明と大胆なカメラワーク、そしてBGMの高揚感が相まって、見る者を引き込む力があります。
中でもマジックショーの場面では、単なるアニメという枠を超え、「観客の視線」を意識した映像構成になっており、演出陣の意図的な計算が感じられます。これは、魔法ではなく“演出”という要素をあえて主軸にした本作ならではの魅力と言えるでしょう。
■ 音楽が物語に与えた多層的な彩り
『魔法のスターマジカルエミ』において音楽の存在感は非常に大きく、特にオープニングテーマ「不思議色ハピネス」やエンディング「あなただけDreaming」などは、作品世界のムードを一瞬で視聴者に伝える力を持っていました。
さらに挿入歌や劇中のマジックショーで使用される楽曲も印象深く、音と映像の融合が非常に高次元でなされています。歌手・太田貴子の歌声は、マジカルエミのキャラクターと完全に一体化しており、主題歌の存在は単なるBGMではなく、登場人物の心情や世界観を代弁する“語り手”のような役割を果たしていました。
■ 視聴者とメディアの反応
静かな熱狂と後年の再評価
放送当時のリアクションは、派手さのある前作と比較してやや地味という評価もありましたが、一方で「日常と夢のバランスが絶妙」「思春期の女の子の感情をここまでリアルに描いた作品は他にない」といった称賛の声も多く寄せられました。
商業的なグッズ展開はやや控えめだったものの、コアなファン層によって語り継がれ、1990年代以降の再放送やDVDボックス発売時には“隠れた名作”として注目を集めました。現在では、ぴえろ魔法少女シリーズの中でも異色の存在として熱心なファンに支持されています。
■ マジカルエミという存在の象徴性
自分を信じる力
この作品が描いたのは、何よりも「不完全な自分を認め、それでも前に進む」というメッセージです。香月舞は最終回に向けて、自分の中の弱さや未熟さと向き合いながらも、ステージの上では誰よりも輝こうと努力を続けます。
マジカルエミというキャラクターは、魔法で自分を変えた理想の姿であると同時に、「努力して夢に近づいていくための象徴」でもあります。それは、現実世界に生きる私たちにとっても通じるテーマであり、だからこそこの作品は時代を越えて共感を呼び続けているのです。
■ 華やかさの裏にある本当の魔法
『魔法のスターマジカルエミ』は、見た目はキラキラした魔法少女アニメでありながら、その内実は非常に深く、思春期の少女が抱える不安や期待、失敗と希望の物語です。
魔法は便利な力ではなく、「変わりたい」という切なる想いのメタファーとして描かれ、そこには嘘のないリアリティが宿っています。ステージのスポットライトに照らされて輝くマジカルエミの姿は、私たちが胸の奥で密かに抱く“なりたい自分”の投影なのかもしれません。
時代を超えて、今こそもう一度見直したい――そんな、心に魔法をかけてくれる作品です。
●当時の視聴者の反応
■ 視聴者の声に映る「リアルな魔法」
放送初期、子どもたちは変身するエミの華やかさに心を奪われた。だが、それと同時に当時の小学生~中学生の間で話題になったのは、主人公・香月舞の「失敗を恐れながらも挑戦し続ける姿」だった。エミは決して完璧な存在ではなかった。魔法で大人の姿になっても、中身はあくまで舞のまま。マジックの世界で“エミ”が注目される一方、現実では失敗続きの“舞”が苦悩する――その構図が、「成長途中の子どもたち」に深い共感を呼んだのだ。
当時のファンレターには「舞ちゃんのように、私も不器用だけどがんばってる」「マジカルエミは憧れだけど、舞の気持ちがすごく分かる」といった文言が多く寄せられ、テレビ雑誌などの投稿欄にも同様の意見が目立った。
■ メディアの眼差し
「魔法少女の成熟化」との評価
新聞やテレビ情報誌はこの作品を、従来の“魔法でなんでも解決”型の魔法少女から一歩進んだ、内面的な成長を主軸とした「精神的変身もの」として評価した。とくにアニメージュやアニメディアといった専門誌では、主人公が持つ“魔法と現実のギャップ”を扱ったシナリオの完成度が取り上げられ、特集記事が組まれたこともある。
また、アニメ評論家の間では「ぴえろ魔法少女シリーズの中でも、最も等身大の少女を描いた作品」との声も多かった。マジカルエミはアイドルでもスーパーヒーローでもなく、「等身大の夢を追いかける姿を通して、視聴者に成長の物語を重ねさせる」構造が、時代性に合致していると評されたのだ。
■ 書籍・ムックでの再評価と当時の分析
アニメの放送が進むにつれ、関連書籍やムック本でも『マジカルエミ』は特集されるようになった。『アニメック』や『アニメージュ別冊』などでは、イラストやシナリオ解説とともに、ファンから寄せられた“悩める舞への応援メッセージ”を掲載していた。
また、後年発行されたぴえろ作品の総括本では、本作が「子ども向け作品でありながら、社会的リアリズムを潜ませた革新作」として改めて再評価されている。演出面では“光と影の描写”が特徴的とされ、舞の心の揺れ動きを画面演出で巧みに描いた回などは、現在も一部アニメファンの間で語り草となっている。
■ キャラクター商品では異例の「大人支持」
放送当時のマーチャンダイジング戦略においては、マジカルステッキや変身アイテム、エミの人形などが中心だったが、その中で意外な人気を得たのが“舞”としての生活道具モチーフの文房具である。「夢に向かう日常」の象徴として、小学校高学年~中学生女子が文房具を買い求めたという報告が、当時の小売業界のトレンド誌『日経流通新聞』などに掲載されていた。
また、“エミではなく舞が主役”という構図に共感した若い女性視聴者が、放送終了後に同人誌活動やファンジン発行を行うなど、コアな支持層が形成されたのも特筆すべき反応である。
■ ファンイベントと手紙の熱量
本作に関しては大規模な商業イベントよりも、ファンクラブやアニメファン主催の上映会や座談会での盛り上がりが印象的だった。1986年初頭に行われた“ぴえろ魔法少女シリーズ連続上映会”では、クリィミーマミやペルシャを押しのけてエミ関連話数の上映回に最も多くのファンが集まったという記録が残っている。
また、日本テレビやスタジオぴえろには、放送期間中・終了後も合わせて相当数のファンレターが寄せられ、「もっと舞のことを描いてほしい」「マジックの練習のシーンを増やして」など、きわめて具体的な要望も見られた。
■ 変化のうねりの中で見せた“未完成の輝き”
『魔法のスターマジカルエミ』が1986年2月に幕を閉じたとき、視聴者の心に残ったのは「完成された夢の象徴」ではなく、「努力しながら前に進む一人の少女の軌跡」だった。魔法少女というジャンルに対する視点を一段深めた本作は、当時の社会の空気、若者の不安と希望を象徴する作品として静かに記憶されていった。
今改めて振り返ってみても、本作は一過性のブームで終わらない“少女のリアルな成長物語”として、じわじわと心に染み入ってくる力を持っている。子どもでありながら大人を夢見て、しかし夢と現実の狭間で揺れる舞の姿――それは、1985年という時代を生きたすべての「まだ未完成な存在」への温かいエールだったのかもしれない。
●イベントやメディア展開など
■ 舞台付きイベントの実施
全国を駆け抜けたリアル「マジカラット」
『魔法のスターマジカルエミ』は、物語内に登場するマジック劇団「マジカラット」にちなみ、リアルイベントでも“マジック”と“ショー”を融合させた特別イベントがいくつか企画されました。特に1985年の夏休みシーズンには、関東近郊の百貨店やイベントホールで、「マジカルエミのマジックショー」なる特設ステージが開催され、声優やマジシャンが出演し、子どもたちの前で華麗なパフォーマンスを繰り広げました。
また、実際に「エミ」に扮したコスプレモデルが登壇することで、テレビ画面の中の夢が現実に“出現”するような体験を観客に提供。この演出は、特に子どもたちにとっては強烈な印象を残し、当時のファンからは「本当にエミに会えた!」という興奮の声が雑誌投稿欄などで寄せられていました。
■ 声優の小幡洋子を前面に
アーティスト戦略とタイアップ
主人公・香月舞(マジカルエミ)の声を担当したのは、当時アイドル的存在だった小幡洋子。単なる声優としてではなく、彼女自身が「マジカルエミそのもの」というイメージで一貫したメディア展開が図られました。
特筆すべきは、彼女の歌手活動とのクロスプロモーション。オープニングテーマ「不思議色ハピネス」やエンディング曲「あなただけDreaming」などは、アニメの放送と同時期にレコードとしてリリースされ、テレビアニメ誌・音楽番組・ラジオなどでも積極的に取り上げられました。
1985年後半には、音楽番組『ザ・ベストテン』や『ミュージックステーション(前身番組含む)』などで、エミのコスチュームを模した衣装で登場し、アニメのファン層以外にも「小幡=エミ」という図式を広めることに成功。この戦略は当時としては画期的で、後の「声優アイドル」ブームの先駆けの一つといえる動きでした。
■ 雑誌メディアとの巧みな連携
アニメージュ、マイアニメ、OUTなど
1980年代半ばのアニメブームにおいて、アニメ雑誌の影響力は絶大でした。『魔法のスターマジカルエミ』は、その中でも特に『アニメージュ』『アニメディア』『マイアニメ』『OUT』といった専門誌と連携し、放送開始前から特集記事を展開。登場キャラクターや変身シーンの設定画、監督インタビュー、マジック演出に関する考察などが掲載され、ファンの期待を煽りました。
特に1985年夏号の『アニメージュ』では、表紙にマジカルエミが大きくフィーチャーされ、巻頭カラーページでは実写の舞台写真とともに、現実とアニメの境界を越える世界観が強調されました。ファンアートコーナーでもエミの投稿が急増し、一種の“ブーム到来”を予感させる熱気に包まれていました。
■ テレビメディアでの戦略的露出
特番、予告、インタビュー
放送局である日本テレビ系列でも、『魔法のスターマジカルエミ』のプロモーションは多角的に行われました。通常の次回予告に加え、特別編集版のプロモーション映像が夏季や年末のファミリー向け番組の中で短く流され、視聴者の目を引きました。
また、番組開始から半年後の1985年末には「ぴえろ魔法少女三部作 特別総集編(仮題)」といった深夜帯の特番が地方系列局で放映され、マミ・ペルシャ・エミを横断的に振り返ることでシリーズ全体のファンの関心を高める効果がありました。
■ キャラクターグッズと玩具展開
玩具店の店頭キャンペーン
1980年代のアニメプロモーションにおいて重要な柱となったのが関連商品の展開。『マジカルエミ』においても、変身グッズやステッキ、シール、ノート、文房具、着せ替え人形などがバンダイやサンリオなどから販売されました。
販売促進として、全国の玩具チェーン店(トイザらス、ダイエー系玩具売り場など)では「マジカルエミグッズ購入キャンペーン」や「マジック体験会」なども実施され、一定金額の購入者にはオリジナル缶バッジやサイン色紙風の特典がプレゼントされました。これらは当時の小学生女子層の人気を掴み、週末には店頭に列ができるほどだったと当時の業界誌に報じられています。
■ ソノシート・カセットドラマ・おたのしみブックの発行
エミの世界観を家庭に持ち帰らせるための試みとして、主題歌を収録したソノシート付き絵本、キャラボイス入りカセットドラマ、そしてぴえろ監修の「マジカルエミ おたのしみブック」が相次いで発行されました。
これらはテレビ放送だけで完結しない“二次的体験”を提供するメディアとして好評を博し、とりわけカセットドラマではトポ役のキャラクターがナビゲーターとなり、視聴者をエミの物語世界に再訪させる構成が話題となりました。
●関連商品のまとめ
■ 映像関連商品
放送終了後、LD、VHS、DVD、Blu‑rayと多彩に展開された。VHSはレンタル・市販盤共にリリースされ、全38話を収録した全巻セットも見られた。LDは「PERFECT MEMORIAL ON TV」LD‑BOXとして発売され、その後DVDでは2002年に「コレクションBOX1・2」(各ブックレット付)、2007年には「DVDメモリアルボックス」、2011年には廉価劇場版ライン「EMOTION the Best」よりDVD‑BOX1(2011年11月発売)・BOX2(同12月発売)と立て続けにリリースされた。Blu‑ray化は現時点で未確認だが、DVD‑BOXはいずれもスタンダード映像・モノラル音声で、既発最新商品の特徴として当時の原画、ノンクレジットOP/EDなど素材をそろえている。
■ 書籍関連
テレビ放送中には『ちゃお』(小学館)など女性向け漫画誌でコミカライズが掲載され、全3巻の単行本として刊行された。アニメ情報誌『アニメージュ』『ニュータイプ』などでは特集記事やポスター付録が展開され、放送期やリバイバル放送に連動して資料特集やイラスト満載の回顧記事が掲載された。またOVA『蝉時雨』や『雲光中』を含むスタッフインタビュー、設定資料、ノベライズなどをまとめたムック・公式ガイドブックも数冊発売され、写真・印象深い名場面スチル、設定画を多数掲載。さらに数々のグッズカタログ本にも特集掲載された。
■ 音楽関連
主題歌EP(7″シングル)は小幡洋子による「不思議色ハピネス」「あなただけDreaming」や挿入歌「南國人魚姫」がOriconチャートに入り、当時の代表的な魔女っ子ソングとしてCD化された。LP時代も含めて後にCD再発されたほか、2002年/2011年DVD‑BOX収録のサウンドトラックにはBGMや劇中歌が収録。EP/LPレコードはコレクター需要があり、VHS/DVD特典として音楽クリップ映像をまとめた音楽編ディスクもありダウンロード音源としても配信開始された。
■ ホビー・おもちゃ
放送当時からバンダイが展開したアクションフィギュア、魔法のステッキやハートブロームといった変身アクセサリー玩具、ぬいぐるみ、マジックショーゲーム(ボード付きアクションセット)などが発売された。カプセルトイ(ガチャ)ではミニフィギュアセット、バッジ、キーホルダーがラインナップされ、高いコレクション性を残すレトログッズとして人気。超合金やプラモデル、レジンのガレージキットも後年製造され、1/6スケールの完成品や未塗装キットなどが市場に存在。海洋堂、フカヤ、リューノスなどのメーカーが、香月舞(エミ)、トポをモチーフにしたフィギュアを展開。オリジナルポーズやミュシャ調イラストを立体化したPVC完成品も登場し、高額レア商品として中古市場で2万~3万円超で取引されている。
■ ゲーム関連
テレビ放送中および後年に、家庭用テレビゲーム機向けソフトは正規発売が見られなかったものの、「マジックショーゲーム」と呼ばれる玩具系ボードゲームがバンダイから発売され、劇中のマジック演出・ステージ演出を模したすごろくや派生ルールで、子ども間で遊ばれた。また、当時物のマジカルパーティーシリーズやすごろく型ボードグッズも存在し、家族で楽しめる構成。さらにカードゲーム風のトレーディングカード、ぬりえ・ワークブック付属の付録系ゲーム付きシート等が展開された。近年、スマホ等でリバイバル配信される可能性も語られる中、正式アプリ化や電子ゲーム化は未だ実現していない。メルカリ等で「マジックショーゲーム」「ボードすごろく」「カード・トレカ」「かるた」など様々な当時物ゲームが流通しており、市場価格は数千円~数万円と幅がある。
■ 食玩・文房具・日用品
当時発売された食玩は少数ながら、トレーディングフィギュア付き菓子パッケージの商品があり、ミニフィギュアと台紙やカードが付属するセットがあった。文房具では、ノート・筆箱、箸箱、巾着袋、ポーチ、ステッキ型消しゴムなどのキャラクター文具が販売され、特に小学生女子向けに人気。価格は数百円~千円台、学校用として幅広く利用された。日用品では子ども向けスリッパ、タオル、綿あめ袋などの雑貨・生活雑貨にも展開。食玩や文具は今でも昭和レトロブームで中古流通し、コレクター間で取引されている。
■ お菓子・食品関連
お菓子・食品では、キャラ絵付きパッケージの菓子(例:キャンディ、チョコレート)、当時物の綿あめ袋が確認されており、綿あめ袋は今なおオークションで2,600円前後で取引されるレアアイテム。加えて、菓子メーカーが発売した時期限定キャラメルやスナック類にもエミやトポが描かれ、駄菓子屋で販売されていた。ファン製の同人お菓子やポストカード付シール付き食菓商品も存在し、ノベルティとして配布されたことも。一部は特定イベント限定品だが、近年ではリバイバルパッケージとして復刻される商品も散見され、食玩と併せて収集対象となっている。
●オークション・フリマなどの中古市場での状況
■ 映像関連商品
ヤフオク!では『魔法のスターマジカルエミ』のVHSやLD(レーザーディスク)が出品されることがありますが、いずれも流通量は限られています。特に日本ビクターから発売されたVHS全巻セットは希少性が高く、美品で揃い箱付きのものは1万円前後で落札されるケースがあります。LDは東芝EMIからリリースされた単巻やBOXがあり、ジャケットのイラストが美麗でコレクション需要も高く、1枚あたり2000~5000円程度で取引されることが多いです。DVD-BOXは2000年代に発売されたピエロクラシックコレクションの一環として流通しており、未開封の美品は1万5000円~2万円の間で取引されることがあります。ブルーレイ化はされていないため、LDやDVDの価値が相対的に高くなっています。
■ 書籍関連
書籍では、放送当時のアニメ雑誌(アニメディア、マイアニメ、OUTなど)に掲載された記事の切り抜きやグラビア特集が出品される傾向があります。特に表紙にエミが登場している号は人気が高く、1冊1000~2000円前後で落札されることがあります。また、単行本として講談社から出版されたコミカライズ版(作画:ひおあきら)は古書市場でも人気があり、美品で帯付きの初版は3000円以上の値がつくこともあります。ムック本や設定資料集は発行数が少なく、見つかれば5000円近くの高値がつくことも珍しくありません。全体的に書籍関連は保存状態によって価格差が出やすい傾向です。
■ 音楽関連
音楽メディアでは、EP盤(シングルレコード)とLP盤(アルバム)の両方が出品されています。主題歌「魔法のスターマジカルエミ」や挿入歌「風のInvitation」などが収録されたEP盤はジャケットの状態が良いと2000~3500円程度、LP盤は初回帯付きで4000円以上の価格がつくこともあります。CD音源は1990年代に発売されたアニメソングのコンピレーション盤や、スターチャイルドレーベルの復刻シリーズに収録されていることもあり、それらは1000~2000円前後で出回っています。ただし、初期CD(初版)や音楽カセットテープなどはかなり希少で、コレクターからの注目も高く、5000円以上の価格がつくことも見られます。
■ ホビー・おもちゃ
玩具・ホビー系では、放送当時にタカラやバンダイが製造・販売したフィギュアやぬいぐるみが注目されています。特にマジカルエミの可動人形(ドール)は人気が高く、箱・付属品完備の状態で8000~12000円ほどで落札されることがあります。また、衣装付きの着せ替え人形(ドールシリーズ)は状態が良ければ15000円を超えることもあります。ぬいぐるみはトポ(鏡の妖精)の商品が中心で、こちらも2000~5000円の範囲で動きがあります。
そのほか、当時の食玩景品(ソフビ人形やマスコットキーホルダー)やパズル、シール類、文房具類が一括出品されるケースもあり、まとめ売りで3000~6000円前後の落札が目立ちます。魔法少女シリーズのコレクション性を重視するファンが多いため、パッケージが残っている未開封品には特に高い評価が付きます。
■ ゲーム
ゲーム関連では、1980年代後半に発売されたLSIゲームや液晶玩具といった電子ゲーム機、またアニメ系すごろく、トランプ、かるたなどのアナログ系ボードゲームが少数ながら出品されています。これらは『魔法のスターマジカルエミ』単体名義で販売された商品は少ないため、他の魔法少女シリーズと混在した商品や、ぴえろ系作品の合同すごろく等が見られます。出品数は少ないながらも、完品であれば5000円前後で落札されることがあり、特に未開封状態のものはプレミアが付きやすく、8000円を超える例もあります。
テレビゲームとしての展開はされていないため、現在のところ主にアナログゲームか玩具ベースのものが対象となっています。
■ 食玩・文房具・日用品
このカテゴリでは、1980年代に展開されたお菓子のおまけ(シール・カード・マスコット)や、当時の文房具(下敷き・筆箱・鉛筆・ノートなど)が主に出品されています。文具類は特に女子小学生向けに展開されており、パッケージ付きの未使用品は1000~3000円程度で落札されています。日用品ではハンカチ・タオル・巾着袋・弁当箱・水筒といったグッズが見られ、実用品よりもキャラクターの絵柄と保存状態によって価格が左右されます。特にイラストが当時のアニメ雑誌と連動しているデザインの場合、ファンからの評価が高くなり、セット売りなどで5000円を超えることもあります。