
【中古】 DVD 子鹿物語 日本語吹替なし / [DVD]【メール便送料無料】【最短翌日配達対応】





【アニメのタイトル】:子鹿物語
【原作】:マージョリー・キナン・ローリングス
【アニメの放送期間】:1983年11月8日~1985年1月29日
【放送話数】:全52話
【監督】:おおすみ正秋
【シリーズ構成】:雪室俊一
【音楽】:すぎやまこういち、神山純一
【脚本】:雪室俊一、馬嶋満、多地映一、吉川惣司
【キャラクターデザイン】:関修一
【作画監督】:こさこ吉重、百瀬義行、辻伸一、小田部羊一、北島信幸 ほか
【音響監督】:山田悦司
【絵コンテ・演出】:奥田誠治、黒川文男、岩崎宏、小華和ためお、小原秀一 ほか
【アニメーション制作】:ビジュアル80
【制作】:講談社
【放送局】:NHK総合
●概要
■ はじめに ~静かに始まる森の物語~
1983年11月8日から1985年1月29日まで、NHK総合テレビにて放送されたアニメ『子鹿物語』は、全世界で読み継がれている児童文学の傑作を原作に、日本の映像文化として丁寧に再構築された作品です。アメリカ文学のなかでも自然描写と少年の成長を主軸にした叙情性豊かな小説として名高い『The Yearling(邦題:子鹿物語)』を原作とし、講談社とエムケイが共同でアニメ化に取り組みました。
本作は単なる動物との交流を描いた作品にとどまらず、自然との関わり、人との絆、そして“別れ”という人生の核心をじっくりと描いた、心に残るドラマが詰まった物語です。
■ 原作からアニメへ ~マージョリー・K・ローリングスの世界観を紡いで~
このアニメの原点は、1938年に発表されたアメリカの作家マージョリー・キナン・ローリングスによる長編小説『The Yearling』にあります。フロリダの奥地を舞台に、一人の少年が野生動物とのふれあいの中で成長していく姿を描いたこの作品は、ピューリッツァー賞を受賞し、後に映画化もされました。
アニメ化に際しては、日本のアニメーション技術と文学的背景を融合させるという意欲的な試みが行われました。作画は繊細で、水彩画のような柔らかさと深みがあり、自然描写の美しさには定評があります。森や川、夜明けの空気感までもが画面を通して伝わってくるような、静かなリアリズムが印象的です。
■ 放送構成と特徴 ~物語と現実の融合~
本作は全体で50話以上が制作され、30分枠での放送スタイルでしたが、AパートとBパートの間にはユニークな“インターミッション”が存在しました。ここでは、実際に撮影された自然のドキュメンタリー映像が挿入されており、視聴者はアニメのフィクションとリアルな自然の世界を同時に体験することができました。
このインターミッションは、まさに作品のテーマである「自然との共生」「命の重み」をリアルに伝えるための演出であり、当時のNHKらしい教育的・文化的価値を重視した試みとも言えるでしょう。
■ 作中のテーマとメッセージ
『子鹿物語』はただ感動的なストーリーを展開するのではなく、随所に深い哲学的な問いを投げかけます。
命とは何か
自然と人間はどのように共存すべきか
成長とは喪失を乗り越えることであるのか
これらのテーマは、視聴年齢層を問わず、多くの人々の心に刺さるものであり、大人が子どもとともに観る価値のある作品として評価されています。
■ 制作体制と関係者の取り組み
アニメ制作は、原作を翻訳・出版していた講談社の協力を得て進められました。脚本や演出には、当時のNHKが誇るドラマ制作陣が関わっており、演出面でも文芸的なアプローチが多く見られます。特に会話の間や沈黙の演出などが特徴的で、アニメーションながらも舞台演劇的な重厚さを持っています。
音楽もまた、作品の世界観を支える重要な要素です。素朴で郷愁を誘うメロディが物語の抒情性を引き立てており、視聴者の感情を静かに揺さぶります。
■ 放送後の展開とメディア展開
放送当時は教育テレビとしての色合いが強く、一般的なエンタメアニメとは一線を画す作品として知られていました。1990年には、NHKの通信販売限定で全話収録のVHS全13巻が発売されましたが、市販されることはなく、その後のDVD化やBlu-ray化も行われていないため、現在では視聴が非常に難しい「幻の作品」となっています。
そのため、当時リアルタイムで視聴していた世代の記憶の中でのみ語り継がれているケースが多く、SNSなどで本作について言及する投稿は、どこかノスタルジックなトーンを帯びています。
■ 視聴者の反響と記憶の中の『子鹿物語』
本作に対する視聴者の印象としては、「静かだけれど心に残る」「涙が自然にあふれるような作品だった」「自然と生きることの厳しさを初めて知った」といった声が多く見られます。特にフラッグとの別れのシーンは、今なお「アニメ史に残る名場面」として語られ続けています。
子どもながらに味わった喪失と再生の感覚は、大人になってから再認識されることが多く、一度観た者の心に長く残る作品として、静かに支持を集めています。
■ 終わりに ~忘れられた名作が今も語りかけるもの~
『子鹿物語』は、華やかな演出も、派手なアクションもないかもしれません。しかし、そこには確かな“生きるということ”の真実が描かれていました。時代の波に埋もれつつある本作ですが、今だからこそ、もう一度脚光を当てるべきアニメーションのひとつと言えるでしょう。
命の重み、自然との距離感、そして人としての成長──そのすべてが詰まった『子鹿物語』は、次の世代へ静かに語り継がれてゆく価値ある作品です。
●あらすじ
■ 開拓時代のフロリダでの生活
物語の舞台は1807年、アメリカ・フロリダ州の原野。バクスター家は、父ペニー、母オリー、そして12歳の一人息子ジョディの3人家族で、自然と共に慎ましく暮らしています。ジョディは無邪気で心優しい少年で、自然や動物を愛し、特に体の弱い親友フォダウィングとの友情を大切にしています。
■ 運命の出会い:子鹿フラッグとの絆
ある日、父ペニーが狩猟中にガラガラヘビに噛まれる事故が発生します。応急処置として、近くにいた雌鹿を撃ち、その肝臓を使って毒を吸い出すという方法が取られました。その雌鹿のそばには一匹の子鹿がいました。ジョディはこの子鹿を家に連れ帰り、白い尾が旗のように見えることから「フラッグ」と名付けて飼い始めます。ジョディとフラッグは兄弟のように仲良く暮らし、日々の生活に喜びを見出していきます。
■ 成長するフラッグと生活の困難
フラッグが成長するにつれて、バクスター家の生活に影響が出始めます。フラッグは畑の作物を食い荒らすようになり、家族の生活を圧迫する存在となっていきます。ジョディはフラッグを森に放しても戻ってきてしまうため、柵を作るなどして対策を講じますが、フラッグはそれを乗り越えて再び畑を荒らします。母オリーはフラッグを撃ちますが致命傷には至らず、最終的にジョディ自身がフラッグを撃ち、命を絶つという苦渋の決断を下します。
■ 少年から大人への成長
フラッグを失ったジョディは深い悲しみに沈み、家出をして森をさまよいます。途中でカヌーに乗って眠ってしまい、郵便船に救助されて家に戻ります。帰宅したジョディは、父ペニーから「これが生きていくということだ」と諭され、現実と向き合う強さを学びます。この経験を通じて、ジョディは少年から大人へと成長し、家族と共に厳しい自然の中で生きていく決意を固めます。
●登場キャラクター・声優
●ジョディ・バクスター
声優:太田淑子
物語の中心となる少年で、自然と動物を愛する心優しい性格の持ち主です。彼の成長と冒険が物語の軸となっており、視聴者は彼の視点を通じて、家族や友情、そして自然との関わりを深く感じ取ることができます。太田淑子さんの温かみのある声が、ジョディの純粋さと情熱を見事に表現しています。
●フォダウィング・フォレスター
声優:戸田恵子
ジョディの親友であり、彼の冒険に欠かせない存在です。活発で好奇心旺盛な性格で、時にはジョディを助け、時には新たなトラブルを引き起こすことも。戸田恵子さんの明るくエネルギッシュな演技が、フォダウィングの魅力を引き立てています。
●ペニー・バクスター
声優:小林昭二
ジョディの父親で、家族を支える頼もしい存在です。厳格ながらも深い愛情を持ち、息子の成長を温かく見守ります。小林昭二さんの落ち着いた声が、ペニーの威厳と優しさを巧みに表現しています。
●オリィ・バクスター
声優:武藤礼子
オリィは、主人公ジョディの母親であり、家庭を支えるしっかり者の女性です。彼女は家族の健康や教育に深い関心を持ち、特にジョディの成長を温かく見守ります。時には厳しく、時には優しく、彼女の存在が家庭の安定に欠かせないものとなっています。その落ち着いた声と穏やかな態度は、視聴者に安心感を与えます。
●トゥインク・ハットウ
声優:増山江威子
トゥインクは、ジョディの学校の教師であり、彼の学びの場を提供する重要な人物です。彼女は教育に情熱を持ち、生徒たち一人ひとりの個性を大切にする指導を行います。明るく前向きな性格で、子どもたちの心を引きつける魅力があります。彼女の存在は、ジョディの知的好奇心を刺激し、成長を促す原動力となっています。
●ウィルソン先生
声優:久保晶
ウィルソン先生は、ジョディの学校の校長であり、地域社会の教育を支える柱のような存在です。彼は生徒たちの未来を真剣に考え、時には厳しく、時には優しく接します。その落ち着いた態度と深い知識は、教師たちからも信頼されており、学校全体の雰囲気を良好に保つ役割を果たしています。
●主題歌・挿入歌・キャラソン・イメージソング
●オープニング曲
曲名:「ハロートゥモロー」
ボーカル:戸田恵子
作詞:山川啓介
作曲:すぎやまこういち
編曲:すぎやまこういち
■ 【はじめに ― アニメの始まりを告げる「優しい風」】
1983年秋、NHKが送り出した感動アニメ『子鹿物語』は、静かな自然と人の心の機微を丁寧に描いた作品でした。その導入部を彩ったのが、この「ハロートゥモロー」というオープニングテーマです。
この歌は、朝霧が晴れて新しい一日が始まるような、優しく透明感のある旋律で幕を開けます。人と自然、そして未来への希望を織り交ぜながら、12歳の少年ジョディの視点を音楽に乗せて届けてくれます。
■ 【楽曲構成 ― すぎやまこういちらしい品格と情感】
作曲・編曲を担当したのは、『ドラゴンクエスト』シリーズなどで知られる作曲家・すぎやまこういち氏。本楽曲では、彼らしいクラシカルでありながら耳に残るメロディラインが全編を通して流れます。
前奏は柔らかなストリングスと木管楽器の軽やかな絡み合い。決して派手ではないが、聴く者の心をそっと包み込むような音運びで、物語の舞台である19世紀フロリダの自然を想起させます。
サビ部分では音域がやや上がり、希望に向かって歩み出すような推進力を感じさせる展開に。コード進行も穏やかに進み、気づけば心が前を向いている――そんな印象を残してくれます。
■ 【詞の世界 ― 山川啓介の「明日」への祈り】
詞を手がけたのは、叙情的な作風で定評のある山川啓介氏。彼が描く「明日」には、単なる時間の流れを超えた祈りのようなものがあります。
歌の冒頭、この一行で物語世界と聴き手の心が一瞬にしてつながります。ジョディ少年の成長を見守るかのような語り口は、視聴者にとっても自分自身の過去や未来を重ね合わせる鏡のように感じられます。
歌詞には“失うこと”や“別れ”を示唆するような要素も含まれていますが、それは物悲しいものではなく、“大切なものを大切だと思えるからこそ歩みを進められる”という前向きな哲学に支えられています。
■ 【歌唱表現 ― 戸田恵子の凛としたあたたかさ】
ボーカルを務めた戸田恵子は、当時すでに声優・女優・歌手として活躍していた実力派。彼女の歌声には「芯のあるやさしさ」があり、それがこの「ハロートゥモロー」の世界観と見事に融合しています。
彼女の歌い方は非常に丁寧で、言葉の一つ一つを大切に置いていくようなニュアンスを感じさせます。ビブラートも控えめで、感情過多にならず、それでいて内面からにじみ出る情感が、聴く人の心にやさしく触れてくるのです。
特に「さよなら昨日 僕はきみにありがとう」と歌われる部分は、まるで過ぎ去った日々に感謝を込めて手を振るようで、多くの視聴者の記憶に深く刻まれています。
■ 【視聴者の反響 ― 子どもの心に灯った「未来のうた」】
当時『子鹿物語』を見ていた多くの子どもたちにとって、「ハロートゥモロー」は単なるオープニングテーマ以上の存在でした。
視聴者からは、「毎週この歌を聴くたびに元気をもらった」「歌詞の意味はよくわからなかったけれど、優しい気持ちになれた」「大人になっても口ずさめる不思議な歌」といった声が数多く寄せられています。
大人になってから改めてこの曲を聴くと、その深い意味や音楽性に気づき、思わず涙ぐむという人も。まさに世代を越えて心に響く“人生の主題歌”とも言えるでしょう。
また、この楽曲が収録された音源や映像ソフトが非常に入手困難であることから、「もう一度ちゃんと聴きたい」という切実な願いも数多く語られています。
■ 【まとめ ― 過ぎゆく時代を超えて】
「ハロートゥモロー」は、テレビアニメの枠を超え、聴く人の心に小さな灯をともすような存在です。
ジョディ少年が自然の中で学んでいったこと――愛、喪失、勇気、再生――それらすべてがこの曲には織り込まれています。静かで、力強く、そして優しい。そんな“未来を迎える準備”のような感覚が、この一曲に込められているのです。
数十年の時を経てもなお、人々の記憶に息づく「ハロートゥモロー」。それは単なるアニメの主題歌ではなく、“人生のある瞬間”を思い出させてくれる、特別なメロディなのです。
●エンディング曲
曲名:「空から星が降りてくる」
歌手:高梨雅樹
作詞:山川啓介
作曲:すぎやまこういち
編曲:すぎやまこういち
■ 歌のイメージと音世界
このエンディングテーマ「空から星が降りてくる」は、『子鹿物語』という自然と人間の情感を繊細に描いたアニメの締めくくりにふさわしく、柔らかくも深い情緒を湛えた作品です。
その旋律は、一日の終わりを告げる静かな夕暮れのように、そっと心に降り積もるような静寂感に満ちています。すぎやまこういちが手掛けた旋律は非常にメロディアスで、ピアノと弦楽器を主体にした構成。まるで夜空を見上げるような広がりを持ち、星空が胸いっぱいに広がるかのようなサウンドです。
編曲も極めて丁寧で、決して派手な演出はありません。余韻を大切にした和音の移ろいが、聴く者に物語の余韻をそのまま残し、しっとりとした気持ちのまま番組のラストを迎えることができる構造になっています。
■ 歌詞の概要と情緒の描写
作詞を手掛けたのは、数々のアニメ・ドラマ・歌謡曲で知られる山川啓介。彼の詩は、視覚的なイメージに訴える力を持ち、特に本楽曲では「星が空から静かに降ってくる」というファンタジックでありながらも内省的な表現が用いられています。
歌詞の冒頭では「夜がそっと包みこむ」ような描写があり、孤独と癒やしが同時に立ち現れる世界が広がります。中盤では「遠くの空にいる君へ」と語りかけるような言葉が綴られ、ジョディの心情と重ねるような構成になっており、亡き存在、あるいは離れた人への思慕の情がこめられていると解釈できます。
全体として、言葉は平易ながらも情感は豊かで、「子どもにも伝わりやすく、大人には沁み入る」バランスを保った詞世界となっています。決して説明的ではなく、聞き手の感情のなかでそれぞれの“星”を思い描かせる、想像の余地を残した表現が秀逸です。
■ 歌手・高梨雅樹の歌唱スタイル
高梨雅樹の歌声は、あたたかく落ち着いたバリトン寄りの中音域が特徴で、非常に繊細な表現力を持っています。この楽曲では、決して感情を激しくぶつけるのではなく、まるで子どもに優しく語りかけるようなニュアンスで歌い上げており、視聴者にそっと寄り添うような印象を残します。
高梨の歌唱は、無理に技巧を見せつけるものではなく、自然体のまま音と詞を調和させていくスタイルで、特にブレス(息継ぎ)の位置が絶妙。歌の合間の空白がかえって情感を高め、心に沁み入るような仕上がりとなっています。
特に終盤の「いつまでも 君を想って 星を見ているよ」という一節では、まるで涙がにじむような抑えた語尾の表現があり、視聴者の感情を静かに揺さぶります。
■ 視聴者の受け止め方と余韻
放送当時、この楽曲は静かな感動を呼び、放送終了後にはしばらく黙って余韻に浸る視聴者が多かったと語られています。特に子どもよりも親世代、あるいは10代後半の感受性豊かな層から「胸に残るエンディング」として高い評価を受けました。
SNSのない時代でしたが、NHKへの視聴者からの手紙には、「この歌を聴くと、自然や家族をもっと大事にしたくなる」「夜空を見るのが好きになった」といった感想が寄せられていたようです。また、物語の主軸であるジョディと子鹿の絆を思い返す声も多く、このエンディングが作品全体に対する感情的な架け橋となっていたことが分かります。
一部のアニメファンや音楽マニアからは、「すぎやまこういちが手掛けた楽曲のなかでも特に静謐な作品」として再評価されることもありました。テレビアニメのエンディングとしてだけではなく、独立した音楽作品としてもその価値が認められています。
■ まとめ
「空から星が降りてくる」は、単なるエンディングテーマに留まらず、アニメ『子鹿物語』の世界観や登場人物たちの心情、視聴者の感受性すら包みこむような、心の深部に訴えかける楽曲です。すぎやまこういちの叙情的なメロディ、高梨雅樹の抑制された温かな歌声、そして山川啓介の余韻ある言葉が三位一体となり、作品全体の余白を彩るように機能しました。
今では放送当時の録音や映像を見つけるのが困難なため、記憶や記録に残されたこの歌の美しさが、かえって一層の幻想性と尊さを帯びているのかもしれません。
●アニメの魅力とは?
■ 一貫したテーマ:命との向き合い方
本作品の最大の特長は、「命」というテーマへの真摯な向き合いである。物語の主人公である少年ジョディは、両親や友人とともに大自然の中で暮らしている。ある日、母鹿を失った小鹿を助けたことをきっかけに、彼の人生が大きく変わっていく。
動物を「飼う」ことではなく、「共に生きる」という姿勢で描かれている点が印象的で、ペットアニメとは一線を画している。子どもの成長の中で、何を選び、どう関わるかが丁寧に描写されており、視聴者に問いかけるような構成になっている。
■ 美しい自然描写とリアリティ
舞台は19世紀初頭のアメリカ南部・フロリダ州の開拓時代。山や川、林に囲まれた自然の豊かさがアニメーションで生き生きと再現されている。背景美術の丹念な筆致により、風にそよぐ草木の揺らぎ、夕暮れの金色の空、静かに降る雨のしずくまでが情緒をたたえており、まるで視聴者自身がその土地に佇んでいるような没入感を覚える。
また、狩猟や畑作といった生活文化も丁寧に再現されており、当時の農村生活を理解する教材的価値もある。
■ 丁寧な心理描写と人間関係の深さ
ジョディの成長は、彼を取り巻く人々の温かな支えなしには語れない。父・母との家族愛、友人・フォダウィングとの友情、隣人や教師との交流など、どの人間関係も一面的ではなく、多層的な感情の積み重ねで構成されている。
特に印象的なのは、父との関係性である。時に厳しく、時に優しく、自然と共に生きることの尊厳を語る父の姿は、少年の心に大きな影響を与える。また、母の無償の愛情も物語の要であり、家庭の温かさが物語の根底を支えている。
■ アニメにしては異色の構成:実写ドキュメントの導入
本作の特筆すべきユニークな試みとして、アニメ本編の間に挿入される実写映像がある。インターミッションとして、自然や野生動物、生態系に関するドキュメンタリー映像が組み込まれており、視聴者に「命のリアル」を感じさせる工夫がされていた。
この構成により、単なるフィクションでは終わらせず、現実世界への視点や考察を促す教育的要素が強く感じられた。子どもたちにとっては自然を学ぶ教材としても有効であり、大人にとっては失われつつある自然観への再認識の契機となった。
■ 音楽の力で深化する情感
物語に流れる音楽は、すぎやまこういちが手がけた劇伴と主題歌が中心である。開放感にあふれたオープニング「ハロートゥモロー」、そして静かな余韻を残すエンディング「空から星が降りてくる」は、それぞれ物語の始まりと終わりにぴったりと寄り添っている。
とくに「空から星が降りてくる」は、生命のはかなさと美しさを歌い上げた名曲であり、ジョディと小鹿の絆に寄り添うように物語の余韻を深めてくれる。こうした楽曲のクオリティの高さもまた、本作が名作と呼ばれるゆえんである。
■ 放送当時の反響と今なお語られる余韻
当時の視聴者層は小学生中心だったが、保護者層からの評価も高く、「家族で安心して見られる番組」「命の大切さを親子で考えるきっかけになった」といった声が多く寄せられた。教育的配慮に満ちたアニメとして、家庭や学校現場でも推薦されることがあった。
また、本作は1980年代後半にはVHSとして限定販売されたが、ソフト化が進まず、いまでは幻の作品とされることも多い。そのことも相まって、かつて本作を視聴していた世代の中では「もう一度見たいアニメ」として語り継がれている。
■ 現代に蘇るべき作品としての意義
環境問題や人間と動物との共生が問われる現代において、『子鹿物語』が伝えていたメッセージは再び注目されるべきである。子どもたちに自然の豊かさと儚さ、命の重さを教えることができる貴重な教材として、令和の今こそ再放送やリメイクの可能性があってもよいだろう。
また、アニメという表現手段でここまで深いヒューマンドラマを描けるという実例は、作品づくりに関わるクリエイターたちにとっても大きな示唆を与えるはずだ。
■ 優しさが胸に残るアニメの記憶
『子鹿物語』は、派手な演出や激しいアクションとは無縁ながら、だからこそ心に深く染み入る作品である。視聴後に残るのは、鮮烈な映像ではなく、登場人物の言葉や自然の音、そして静かに歩むジョディの後ろ姿である。
人と自然が寄り添って生きることの大切さ、命あるものへの慈しみの気持ち。こうした価値観をアニメーションとして丁寧に伝えてくれた『子鹿物語』は、今なお多くの人の記憶に、あたたかな風景として残り続けている。
●当時の視聴者の反応
■ 静かに心を揺さぶった物語の登場
1983年11月に始まったアニメ『子鹿物語』は、当時の日本のアニメ界にあって、派手な演出やSF的な設定とは一線を画した存在だった。米国南部の大自然とそこに暮らす家族の営みを描く本作は、放送当初から“静かな衝撃”として受け取られた。
NHKらしい品格ある演出、丁寧な作画、そしてドキュメンタリー映像を挿入した構成は、視聴者に新鮮な印象を与えた。新聞のテレビ欄には「自然を感じることのできる貴重なアニメ」として取り上げられ、子どもだけでなく親世代の関心も惹きつけた。
■ 教育番組とアニメの融合に寄せられた期待
メディア関係者の中では、本作を“新しいジャンル”の幕開けとする意見もあった。テレビ誌『月刊テレビライフ』1984年3月号では、「アニメに知育と教養を融合させた試み」として特集が組まれ、制作者インタビューが掲載された。
とくに実写映像とアニメの融合構成に注目が集まり、教育関係者からは「教室でも見せたい作品」と評価された。自然観察の導入教材として一部の小学校で教材ビデオとして録画されたという報道も確認されている。
■ 感受性の育成に役立つとの親世代からの声
当時、視聴者層の中で特に印象的だったのは「子どもと一緒に見られる作品」として親たちの支持が高かった点である。NHK視聴者センターには、「家族の絆や命の尊さを改めて考えるきっかけになった」という声が多く寄せられたという。
中でも、主人公ジョディが動物と心を通わせる場面は、「子どもが泣いていた」「私も昔こんな気持ちになった」といった感想が相次ぎ、視聴後の親子の会話のきっかけになったという体験談が雑誌投稿欄で複数確認されている。
■ 書籍・雑誌による再評価の動き
放送終了からしばらくしてからも、本作の評価はじわじわと広がっていった。1986年には児童文学研究誌『子どもの世界』が「テレビアニメが描く文学的情感」と題した特集を組み、児童文学との共通性を論じる中で本作を“良質な映像化の成功例”とした。
また、1990年にNHKが通信販売限定で全話をVHS化した際には、教育関係団体や図書館からのまとめ購入が相次ぎ、一般販売がされなかったにもかかわらず“幻の名作”として再び注目を集めることとなる。
■ 子どもの情操教育に活用した教育現場
教育現場での本作の活用も目立っていた。東京都内のある小学校教諭が『教育技術小五』誌に寄せたレポートでは、「道徳授業の導入に『子鹿物語』のシーンを引用した」とあり、視聴後に子どもたちが自分の飼っている動物や家族について作文を書いたという。
特にジョディと子鹿との絆を描いた終盤エピソードは、「命の重さ」「自然の厳しさ」「家族の愛情」など、さまざまなテーマを横断する教材として注目され、感想文コンクールなどで本作を題材にした作文が受賞する事例もあった。
●イベントやメディア展開など
■ メディアミックスは控えめながら印象的 ― 書籍、音楽、VHSの展開
商業的なメディア展開を避ける傾向の強かったNHKですが、『子鹿物語』においては以下のような関連メディア商品が展開されました。
● 書籍関連
講談社より、アニメのストーリーブックや絵本形式で再構成された児童向けの書籍が出版され、主に学校図書館や児童書売り場で扱われました。また、児童向け月刊誌『たのしい一年生』『小学五年生』などの付録としてキャラクターカードや解説冊子がついた号もありました。
● 音楽関連
主題歌「ハロートゥモロー」(歌:戸田恵子)と、エンディング「空から星が降りてくる」(歌:高梨雅樹)は、NHKソングライブラリーとしてカセットテープで一部販売されました。また、ラジオ番組『みんなのうた』内でのオンエアがあり、番組内で使用されたアレンジ版は一時期リスナーからの人気投票でも上位に入りました。
● 映像商品
1990年にVHSソフトとして全13巻が通信販売限定で発売されました。この販路は当時としては珍しい“ダイレクトメール形式”を採用しており、NHK出版から届くチラシに記載された番号に電話またはハガキで申し込む方式でした。限定生産で、今ではプレミア価格で取引されていることもあります。
■ デジタル技術の先駆けとしての挑戦
『子鹿物語』は、アニメーション制作において初めて本格的にデジタル技術を導入した作品として知られています。特に第2話は、世界初の全編フルデジタルで制作されたエピソードであり、制作にはジャパン・コンピュータ・グラフィック・ラボ(JCGL)が関与しました。また、オープニングやエンディングでは、当時としては珍しいコンピュータグラフィックス(CG)やデジタル彩色が用いられ、視覚的な新しさを提供しました。
■ 実写映像との融合による新たな試み
本作の放送では、アニメーションのAパートとBパートの間に、実写による自然や生態系のドキュメンタリー映像が挿入されました。これにより、視聴者は物語の世界観と現実の自然環境を結びつけることができ、教育的な側面も強調されました。この試みは、アニメと実写の融合という新たな表現手法として評価されました。
●関連商品のまとめ
■ 映像関連商品:VHS・DVD・ブルーレイなど
● VHSビデオ
1990年頃、NHKソフトウェアより通信販売限定で全13巻のVHSセットが発売。
一般流通ではなく、NHKの通販カタログを通じて購入する形式。
各巻に2話~3話収録、実写自然映像パートも収録。
■ 書籍関連:絵本・ノベライズ・設定資料集など
● 原作小説のアニメ版装丁
アニメ版放送にあわせて講談社から“NHKアニメ名作シリーズ”としてノベライズが発売。
挿絵はアニメの作画を流用し、児童向けに平易な文体で再構成。
● 絵本形式の刊行
講談社や小学館の「テレビ絵本シリーズ」で2冊以上刊行。ジョディとフォダウィングが中心。
● 学習雑誌・特集ページ
『たのしい幼稚園』『小学一年生』などにカラー特集記事、シール付録などが見られた。
特集ページではキャラの性格解説やストーリー要約、迷路などの遊び要素も。
■ 音楽関連:主題歌・サントラ・EP・カセットなど
● シングルレコード(EP盤)
「ハロートゥモロー(戸田恵子)」/「空から星が降りてくる(高梨雅樹)」の両A面構成でキングレコードから発売。
ジャケットにはアニメ版のジョディとバクのイラスト入り。
● カセットテープ版
小学生・幼児向けのカセット文庫(キング文庫など)として、ナレーション+主題歌の構成で発売されたものも。
● LP(サウンドトラック)
フルアルバムとしてのオリジナルサントラの市販は未確認。
代替として、NHKアニメ名作の合本LPなどに楽曲が収録された事例あり。
■ ホビー・おもちゃ関連
● ソフビ人形・ぬいぐるみ
『ジョディ』『子鹿フラッグ』『フォダウィング』のぬいぐるみが玩具メーカー数社から限定発売。
特に「小鹿のぬいぐるみ」はNHKエンタープライズのライセンスで製造され、抱き心地の良さが人気。
● パズル
木製の知育パズルとして、動物のシルエットや森の風景を再現した商品が出回る。
● フィギュアやジオラマ
立体的な再現グッズは少ないが、ミニフィギュア型のおまけ付きガムやカプセルトイ形式の商品が数例存在。
■ ゲーム・ボードゲーム関連
● すごろく・パズルゲーム
雑誌の付録や単品販売として「森の中を探検する」すごろくが複数展開。
ルート上に動物や罠が登場する、自然と冒険を学ぶ設計。
● カードゲーム
NHKのキャラクターを扱ったカードゲームに『子鹿物語』が加わっていた例があり。
神経衰弱や動物名当てゲームの形式が主。
■ 食玩・文房具・日用品・お菓子など
● 食玩
ロッテや明治が製造したアニメキャラ付きチョコやウエハース、シール付き菓子など。
シールはキャラクターの名場面や風景画で構成され、コレクション性が高かった。
● 文房具
キャラクター入りのノート、鉛筆、下敷き、消しゴムなど、学童向けに多数展開。
鉛筆には「ジョディのひとこと名言」が印刷されていたものも。
● 日用品
タオル、ハンカチ、巾着袋などの布製品が家庭雑貨店で販売。
シンプルなデザインながら、当時の母親層に人気。
●オークション・フリマなどの中古市場での状況
■ 音楽関連(レコード・カセットテープ・CD)
カセットテープ
『子鹿物語』の音楽編カセットテープが出品され、7,800円で落札されています。中古品でありながら高額で取引されており、コレクターズアイテムとしての価値が伺えます。
レコード
戸田恵子が歌う主題歌「ハロー・トゥモロー」の7インチレコードが出品され、1,500円で落札されています。状態は「やや傷や汚れあり」とのことですが、ファンにとっては貴重なアイテムです。
■ 書籍・絵本・関連グッズ
絵本
永岡書店の「名作アニメ絵本シリーズ47」として『こじかものがたり』が出品され、348円で落札されています。1988年12月5日発行のもので、昭和レトロな雰囲気を持つ絵本です。
その他の書籍
関修一氏がイラストを手がけた絵本『子鹿物語』も出品されており、1,980円で落札されています。NHKや講談社が関与していることから、アニメ版との関連性が高いと考えられます。
●現在購入可能な人気売れ筋商品です♪
【中古】 DVD 子鹿物語 日本語吹替なし / [DVD]【メール便送料無料】【最短翌日配達対応】




