『いけにえと雪のセツナ』(Nintendo Switch)を振り返りましょう

【メーカー】:スクウェア・エニックス
【開発】:Tokyo RPG Factory
【発売日】:2017年3月3日
【販売価格】:5,280円
【ゲームジャンル】:ロールプレイングゲーム

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●概要

■ 懐かしき時代のRPG精神を現代に蘇らせた挑戦作
2017年、Nintendo Switchのローンチと同時に登場した『いけにえと雪のセツナ』は、スクウェア・エニックスが新たに立ち上げたレーベル「Tokyo RPG Factory」による意欲作です。本作は、90年代のスーパーファミコン時代に名を馳せたJRPGの空気感を現代に伝えることを目的とした「RPG原点回帰」の精神に基づいて制作されました。
全編を雪に閉ざされた幻想的な世界を舞台に、命を捧げる運命を背負った少女セツナと、彼女を護る傭兵たちの過酷な旅を描いたこの物語は、かつてRPGに夢中になったすべてのプレイヤーに向けた、静かで重厚なラブレターです。

■ 世界観:犠牲と祈りが支配する氷の大地
本作の舞台は、永遠の冬に閉ざされた孤高の雪国。そこには、定期的に人間の魂を生け贄として差し出さねばならないという厳しい慣習が根づいています。この儀式は、魔物の襲撃を鎮めるための唯一の手段とされており、国家や軍事力による対処が成立しない、神秘的かつ不条理な世界設定が物語に深みを与えています。
主人公は、セツナという若き巫女を護送する任務を受けた傭兵・エンド。彼は当初、ある陰謀の中でセツナに命を奪うよう依頼された立場ながら、旅を共にする中で次第に変わっていく自己と向き合うことになります。命を捧げる少女を中心に展開される本作は、「生きるとは何か」「犠牲とは何か」といった、根源的な問いをプレイヤーに突きつけてきます。

■ システム面の特徴:原点回帰の設計美学
視点と操作感
見下ろし型の2Dマップとドット風味を加えたグラフィック表現は、1990年代の名作RPGを彷彿とさせつつも、HD化された現代的な美しさを併せ持っています。プレイヤーは広大な雪原や氷の洞窟、古代の遺跡といった多彩なロケーションを、パーティを率いて探索します。

■ 戦闘システム:ATBの現代的進化形
戦闘には「アクティブ・タイム・バトル(ATB)」の進化版が導入されており、スクウェアの金字塔『クロノ・トリガー』のシステムを強く意識したつくりになっています。リアルタイムでゲージがたまり、行動の順番が回ってくる緊張感の中で、スキルや連携技を駆使して戦うバトルは、戦略性とテンポを両立させた秀逸な出来栄えです。
加えて、「モメンタムシステム」と呼ばれる独自要素があり、タイミングよくボタンを押すことで技の威力や効果を高めることが可能。これにより、単調になりがちなターン制戦闘にアクティブな操作感が加わり、より深い戦略性が生まれています。

■ キャラクターたち:静かな激情を内に秘めた旅人たち
本作には、大仰なキャラクター演出やボイスアクトはあえて排除されており、テキストベースで語られる物語とキャラの内面描写に重きが置かれています。そのため、キャラクターの個性は静かに、しかし確実にプレイヤーの心に染み込んでいきます。
セツナ:生け贄としての宿命を受け入れ、旅を続ける心優しき少女。あまりにまっすぐな姿勢が、逆に物語に陰影を与える。
エンド:最初は冷酷な傭兵として描かれながらも、セツナの言葉と存在に触れる中で、失っていた感情を取り戻していく。
キール、ジュリオン、アムシーラなどの仲間たちも、それぞれ異なる過去と動機を抱えており、旅の中で徐々にその真実が明かされていきます。
キャラの“見た目”ではなく“内面”で魅せる構成は、古き良きRPGの叙情性を思い起こさせます。

■ 音楽と演出:ピアノが奏でる静寂と哀愁
本作のもう一つの大きな魅力が、全編をピアノ主体で構成された音楽です。作曲は、インディーズの音楽家・末廣尚義が手がけており、戦闘曲からフィールド曲、イベントシーンまで、すべてがピアノ一台で表現されるという、極めてユニークな音響体験を提供します。
軽やかな雪の舞う中で流れる儚い旋律は、物語全体のトーンと深く調和しており、セツナたちの心情と密接にリンクしています。このように、音楽がセリフや演出を超えて物語を語る作品は、近年のRPGでは珍しく、その独自性に高い評価が集まりました。

■ シナリオ展開:直線的でありながら、深く突き刺さる
ストーリーは、王道かつシンプルな展開でありながら、そこに込められたテーマ性がプレイヤーの胸を打ちます。魔物の脅威、犠牲の儀式、人間の業といった重たいテーマを、難解な言葉や複雑な設定ではなく、誰もが理解しやすい形で丁寧に描いています。
特に中盤以降、セツナを巡る運命が加速し、パーティーメンバーそれぞれの葛藤が交錯する場面では、静かに涙を誘うような描写も多く、物語の質的深さが際立ちます。

■ 開発背景:Tokyo RPG Factoryの初陣としての意義
本作は、スクウェア・エニックス内に設立された新ブランド「Tokyo RPG Factory」の第一弾タイトルとして開発されました。レトロスタイルRPGの復活を掲げるこのブランドの理念が、本作には色濃く反映されています。
『ファイナルファンタジー』や『クロノ・トリガー』といった往年の名作を愛した開発陣が、「あの頃の手触り」を今一度ゲームに込めようと、技術や演出を過剰にせず、最も本質的なゲームプレイ体験を届けることに注力したのです。

■ 総評:失われかけたRPGの原風景を見つめ直す
『いけにえと雪のセツナ』は、最新技術でグラフィックや演出を競い合う時代に、あえて引き算の美学で勝負した、異色の作品です。派手さや分かりやすいエンタメ性を排し、あくまで「物語」と「ゲーム性」の本質に立ち戻ったその姿勢は、90年代のJRPGを愛してきた世代には深く刺さるものでしょう。
「懐かしさ」と「新しさ」の絶妙なバランスを持つこの作品は、Nintendo Switchのローンチにふさわしい、“静かなる情熱”を秘めた珠玉の一作として、長く語り継がれていくことでしょう。

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●ゲームの魅力とは?

■ 雪に閉ざされた世界と「いけにえ」の儀式
重厚で静謐な世界観の描写
物語の舞台は、一面が雪に覆われた寒冷な大地。そこでは、古くから「魔物を鎮めるために若い女性をいけにえとして捧げる」という儀式が行われてきた。この設定は、ファンタジーでありながらもどこか現実味を帯びており、プレイヤーの心に残る悲哀を感じさせる。
ヒロインのセツナは、いけにえとして自らを捧げる運命を受け入れており、彼女の護衛として物語が展開していく。この「宿命を背負った旅」というテーマは、王道でありながらも、その儚さと誠実な描写によって深い感動を呼び起こす。

■ クロノ・トリガーを継ぐバトルスタイル
アクティブ・タイム・バトル2.0の進化と緊張感
戦闘システムには、1990年代の名作『クロノ・トリガー』を思わせる「アクティブ・タイム・バトル(ATB)」が採用されている。本作ではそれをさらに現代的に昇華した「ATB 2.0」として実装。コマンド選択式でありながらリアルタイムで敵が行動するため、状況判断と素早い決断が求められるスリリングな展開が魅力だ。
また、戦闘中に「刹那システム」という独自要素も導入されている。これは、コマンド実行時にタイミングよくボタンを押すことで追加効果を発生させるというもので、プレイヤーに緊張感と快感をもたらす。単なる懐古主義に終わらない、戦略性と手応えを両立したバトルが本作の大きなアピールポイントだ。

■ ピアノ一色で染められた音楽の力
静けさの中に宿る感情と美
『いけにえと雪のセツナ』のサウンドは、ピアノを基調としたシンプルながらも心を揺さぶる旋律で統一されている。コンポーザー・古代祐三や下村陽子ではないが、開発チームTokyo RPG Factoryは、当時無名の作曲家・三好智己の感性を全面に押し出した。
この静謐な音楽が、雪に閉ざされた世界の情景と見事に融合し、プレイヤーの心を深く包み込む。派手なオーケストレーションはないが、かえってその「間」が哀愁を漂わせ、物語の余韻を深めるのだ。BGMが語りかけてくるRPGはそう多くない。

■ グラフィックと演出の中に宿る「控えめな美学」
雪と光と影のコントラストが描く叙情詩
ビジュアル面では、3Dモデルによる見下ろし型フィールドが採用されており、懐かしさと現代の滑らかさを同居させた設計となっている。とりわけ雪景色の表現にはこだわりが見られ、吹雪や降雪の粒子表現は幻想的でありながらも冷たさを伝えてくる。
キャラクターのモデリングは過剰な装飾を避け、あくまで控えめかつ温かみのあるデザインがなされている。この“抑制された表現”こそが、儚いストーリーとの調和を生み出している。極端なカットシーンや演出ではなく、しっとりと進行するテンポが、プレイヤーに浸る時間を与えてくれる。

■ 現代のRPGが忘れた“感情の余白”
物語が語りすぎず、想像力を刺激する構造
本作は、長大なセリフや過剰な説明を避け、キャラクターの行間にこそドラマが宿る設計となっている。セツナの微笑み、沈黙の背中、仲間たちの心の揺れ。そのどれもが言葉以上に雄弁であり、プレイヤーの想像力によって補完される。
物語の展開には驚きや陰謀よりも、静かで確かな人間関係の機微が描かれており、プレイヤーに「別れ」「覚悟」「救い」について考えさせる内容となっている。この“語らないことで語る”作風が、深く心に残る要因となっている。

■ 評価と反応:古き良きRPGへの新たな賛歌
懐かしさと新しさを融合した挑戦への評価
『いけにえと雪のセツナ』は、そのレトロ志向の演出やゲーム設計から、往年のRPGファンを中心に支持を集めた。一部では「地味すぎる」「単調」という評価もあったが、逆にその“地味さ”こそが本作の最大の魅力と捉える声も多かった。
ファミ通クロスレビューでは30点台後半とやや控えめな評価だったが、ユーザーからは「泣いた」「RPGに帰ってきた気がした」「最後まで止められなかった」といった感想が寄せられた。海外レビューでは『クロノ・トリガーの精神的後継作』と称されることもあり、静かながらも確かな支持を得た作品である。

■ Tokyo RPG Factoryの決意とその後
“JRPGの魂”を守る開発スタジオの意義
本作を手掛けたTokyo RPG Factoryは、JRPG黄金時代の再生をテーマに掲げて設立された新興スタジオだった。『セツナ』はその第1作であり、続く『ロストスフィア』や『鬼ノ哭ク邦』へと続いていく礎となった。
『いけにえと雪のセツナ』は、派手な演出や豪華声優といった要素に頼らず、「RPG本来の感情体験とは何か」を問いかけた作品である。商業的な成功というよりは、RPGに込められた精神性を体現する“実験作”として位置づけられるだろう。

■ 総評:静寂の中に響く物語の余韻
語りすぎないからこそ、心に残るRPG
『いけにえと雪のセツナ』は、派手なアクションも、爆発的な話題性も持たない。しかし、その静かな佇まいと誠実なつくり込みが、プレイヤーの感情に深く入り込む。まるで、冬の朝に降り積もった雪のように、誰にも気づかれず、しかし確かに美しくそこにある作品である。
もしあなたが、90年代のJRPGに郷愁を感じているならば、あるいは、静かに語りかけてくるゲームを求めているならば、『いけにえと雪のセツナ』は間違いなくあなたの心を打つ一本となるだろう。

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●感想や評判

■ 雪原に響くピアノの旋律:世界観と音楽の魅力
本作の最大の特徴は、雪に覆われた世界を舞台にした幻想的な雰囲気と、全編を通してピアノで奏でられるBGMです。プレイヤーからは、「雪世界の雰囲気が心地よい」、「ピアノ調のBGMが切なさを引き立てている」といった声が多く寄せられています。
一方で、BGMが全てピアノで構成されているため、「場面ごとのメリハリに欠ける」と感じるプレイヤーもおり、評価が分かれるポイントとなっています。

■ 物語の核心:いけにえとしての宿命と旅路
物語は、いけにえとして選ばれた少女セツナと、彼女を護衛する傭兵エンドの旅を描いています。セツナの運命を知りながらも、彼女と共に最果ての地を目指すエンドの姿勢が、プレイヤーの心を打ちます。
プレイヤーからは、「ストーリーが気になって一気に進めてしまった」、「セツナの健気さに感情移入した」といった感想が多く見られます。

■ 戦闘システム:懐かしさと新しさの融合
戦闘は、アクティブ・タイム・バトル(ATB)を採用し、連携技や「刹那システム」などの要素が加わっています。これにより、懐かしさと新しさが融合した戦闘体験が提供されています。
一部のプレイヤーからは、「戦闘が単調で奥深さに欠ける」との指摘もありますが、「シンプルで遊びやすい」、「連携技を試すのが楽しい」といった肯定的な意見も多く見られます。

■ システム面の課題:マップやUIの不便さ
本作では、全体マップやミニマップが存在せず、似たような雪景色が続くため、道に迷いやすいという課題があります。また、装備やスキルの説明が不十分で、システムの理解に時間がかかるとの声もあります。
さらに、敵の種類が少なく、色違いのモンスターが多用されている点や、強力な敵が見た目で判別しづらい点も、プレイヤーからの不満点として挙げられています。

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●イベントやメディア展開など

■ 電撃PlayStationとの連携企画
発売前から、電撃PlayStationとの連携による特集記事が展開され、開発者インタビューやキャラクター紹介、バトルシステムの解説などが行われました。これにより、ゲームの世界観や開発背景がユーザーに伝えられ、期待感が高まりました。

■ 東京ゲームショウ2015での初披露
2015年の東京ゲームショウでは、初めてプレイアブル出展が行われ、来場者は実際にゲームを体験することができました。ディレクターの橋本厚志氏によるステージイベントも開催され、開発秘話やゲームの魅力が語られました。

■ アドトラックによる街頭プロモーション
都市部では、アドトラックを活用した街頭プロモーションが展開されました。雪景色をイメージしたデザインのトラックが音楽を流しながら走行し、視覚と聴覚の両面で注目を集めました。

■ サウンドトラックのリリース
ゲーム内の音楽は、全編ピアノを主体とした美しい旋律で構成されており、プレイヤーから高い評価を受けました。そのサウンドトラック『Winter’s End』がリリースされ、ゲームの余韻を音楽で楽しむことができるようになりました。
アメーバブログ(アメブロ)

■ 攻略本『導きと記憶の書』
ファミ通からは、詳細な攻略情報や設定資料を収録した攻略本『導きと記憶の書』が発売されました。これにより、プレイヤーはゲームの世界をより深く理解し、隠された要素やストーリーの裏側に触れることができました。

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●中古市場での現状

■ メルカリにおける価格帯と動向
メルカリでは、商品の状態に応じて価格が大きく異なります。中古品は約1,600円から3,900円、新品未開封品は約6,700円で出品されています。また、ソフトと攻略本のセット販売も見られ、約3,600円で取引されています。

■ Yahoo!オークションにおける価格帯と動向
Yahoo!オークションでは、過去120日間の落札相場が平均約2,437円となっています。新品未開封品は約3,661円、中古品は状態により約1,751円から2,500円で落札されています。

■ 楽天市場における価格帯と動向
楽天市場では、中古品が約2,432円から3,112円で販売されています。新品は約7,600円で取り扱われています。

■ ブックオフオンラインにおける価格帯と動向
ブックオフオンラインでは、中古品が約2,970円で販売されています。定価から43%オフとなっており、比較的お得に購入できます。

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●本や雑誌での評価

★いけにえと雪のセツナ 導きと記憶の書
内容の概要: 本書は、ゲームのストーリー攻略に加え、登場キャラクターの前日譚を描いたショートストーリー、ピアノ楽譜、設定資料などを収録した、ファン必携の一冊です。特に、セツナたちの旅路を深く掘り下げる内容が特徴で、ゲームの世界観をより深く理解する手助けとなります。
販売会社: 株式会社KADOKAWA
販売年: 2016年4月2日
販売価格: 2,300円(税別)

★電撃PlayStation (2016年2月号)
内容の概要: 『電撃PlayStation』では、『いけにえと雪のセツナ』の特集記事が掲載され、開発スタッフへのインタビューや、ゲームのコンセプト、キャラクター紹介などが詳しく紹介されました。特に、プロデューサーやディレクターの開発秘話が読者の興味を引きました。
販売会社: 株式会社KADOKAWA
販売年: 2016年2月
販売価格: 980円(税込)

★ファミ通 週刊ファミ通 (2016年2月18日号)
内容の概要: 『週刊ファミ通』では、発売直前特集として『いけにえと雪のセツナ』を取り上げ、ゲームシステムの解説や、開発者インタビュー、初公開のスクリーンショットなどを掲載しました。読者からの期待の声や、注目ポイントなども紹介され、発売前の盛り上がりを感じさせる内容となっていました。
販売会社: 株式会社Gzブレイン
販売年: 2016年2月
販売価格: 450円(税込)

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