
*BANDAI バンダイ S.I.C. ロードオブバイストンウェル vol.2 オーラバトラー 聖戦士ダンバイン聖戦士ビランビー ダンバイン
【アニメのタイトル】:聖戦士ダンバイン
【原作】:矢立肇、富野由悠季
【アニメの放送期間】:1983年2月5日~1984年1月21日
【放送話数】:全49話
【総監督】:富野由悠季
【脚本】:斧谷稔、富田祐弘、渡邉由自
【キャラクターデザイン】:湖川友謙
【メカニックデザイン】:宮武一貴、出渕裕
【音楽】:坪能克裕
【演出】:井内秀治、今川泰宏、鈴木行
【制作】:名古屋テレビ、創通エージェンシー、日本サンライズ
【放送局】:テレビ朝日系列
●概要
■ 異世界を駆けるオーラの戦士たち
1983年2月から1984年1月まで、テレビ朝日系列で全49話が放映された『聖戦士ダンバイン』は、アニメ史においても稀有な存在感を放つ作品だ。ロボットアニメにしてファンタジー色を前面に出し、中世風の異世界「バイストン・ウェル」を舞台に、人類の業と欲望、異文化の衝突、そして戦いの虚しさを描いたこの作品は、従来のスーパーロボットものとは一線を画していた。
制作は日本サンライズ。総監督を務めたのは富野由悠季であり、その特異な世界観と陰影に富んだストーリー展開は、のちのアニメ界に多大な影響を与えることになる。
■ 異世界バイストン・ウェル――幻想と現実の狭間にある舞台設定
『聖戦士ダンバイン』最大の特徴は、作品の舞台が地上世界ではなく、中世ヨーロッパ風の異世界「バイストン・ウェル」であるという点だ。この地は、精霊オーラによって人間や動物、機械さえも動かす力を持っているという独特の設定で、これが本作のもう一つの柱となる“オーラ・バトラー”の駆動原理にもつながっている。
バイストン・ウェルには、神秘的な森、空中を滑空する飛行船、封建制度が色濃く残る王国群が存在し、ファンタジーとリアルな人間ドラマが絡み合う土壌が整えられている。富野監督はここで「戦争の意味」「人間のエゴ」「他者との共生」といったテーマを容赦なく描き出していった。
■ 主人公ショウ・ザマ――異世界に召喚された若者の成長譚
物語の中心となるのは、東京郊外に住む普通の高校生・ショウ・ザマ。彼は突然、バイストン・ウェルへ召喚され、巨大な甲虫型兵器「ダンバイン」に乗る“聖戦士”として戦いに巻き込まれていく。
ショウは当初、異世界での出来事に戸惑いながらも、オーラ力に秀でた存在として次第にその能力を開花させていく。しかしその過程で、彼は次々と人を殺め、仲間を失い、裏切られ、そして自らの心にも深い闇を抱えていく。ダンバインという機体は彼の精神そのものであり、戦闘シーンではその苦悩がむき出しになる。
■ オーラ・バトラーとダンバイン――昆虫型ロボットの衝撃
本作に登場するロボットは、従来の“鋼鉄の戦士”とは異なり、まるで昆虫を思わせる有機的な外観を持っている。特に主役メカ「ダンバイン」は、細身のボディに透けるような羽を持ち、その不気味さと神秘性で視聴者の印象に強く残った。
これらの機体は“オーラ・バトラー”と呼ばれ、パイロットのオーラ力を動力源として動くため、搭乗者の精神状態が性能に大きく影響するという設定がなされている。この斬新な構造は、機械と精神の融合というテーマ性を強調する演出でもあった。
■ 商品展開の苦戦とビルバインの登場
『ダンバイン』はロボットアニメでありながら、当時の子供たちにはあまり人気が出ず、スポンサーである玩具メーカー「クローバー」は売上の低迷に苦しむことになる。デザインがあまりにも生物的で“おもちゃらしさ”に欠けたこと、また物語が陰鬱で子ども受けしづらかったことが要因とされている。
この事態を打開するべく、終盤で登場するのが新たな主役機「ビルバイン」である。これはよりヒーローメカ的なデザインとなっており、変形機能や派手なカラーリングなど、当時のロボット玩具のトレンドを意識した仕様となっていた。
さらに物語の舞台も、異世界から現実世界へと移行し、都市部での派手な戦闘が増加。こうしたテコ入れは一定の効果を上げたものの、全体としての商業的成功には結びつかなかった。
■ 敵味方に揺れ動く群像劇――人間ドラマとしての濃密さ
『聖戦士ダンバイン』では単純な勧善懲悪ではなく、多数のキャラクターが信念や欲望に基づいて動き、時に敵となり、時に共闘するという群像劇が展開される。
例えば、ショウの最大のライバルでありながら、時に彼と心を通わせる黒騎士バーン・バニングス。彼もまたバイストン・ウェルから地上に召喚された人間であり、ショウとは対照的な生き様を貫く人物である。その他、物語の鍵を握るシーラ・ラパーナや、野心を隠さないドレイク・ルフトら、多様なキャラクターが濃密に描かれ、戦争の悲哀と希望が交差していく。
■ アフターエピソードとスピンオフ展開
TVシリーズ終了後も、『聖戦士ダンバイン』の世界観は拡張を続けることとなる。1988年にはOVA作品『New Story of Aura Battler DUNBINE』(全3話)が制作され、本編の数年後を描いた後日談が展開された。
さらに、富野監督が構想したバイストン・ウェルを舞台とした別作品として『リーンの翼』や『ガーゼィの翼』も誕生。特に『リーンの翼』は、長年の構想を経て2005年にOVA化され、ファンの注目を集めた。
■ 時代を超えた再評価とBlu-ray BOXの登場
初回放送時には商業的成功には至らなかった本作だが、時が経つにつれてその独創的な構造とドラマ性が再評価されるようになった。特に“異世界転移”と“リアルロボット”を融合させた先駆的な手法は、後年のアニメ作品に多大な影響を与えたとされている。
2017年にはリマスターされた『聖戦士ダンバイン Blu-ray BOX』が発売され、美麗な映像とともに新たな世代の視聴者に向けて再登場を果たした。特典として未公開映像や設定資料、富野監督のインタビューなども収録されており、往年のファンを中心に好評を博した。
■ 結びに――オーラの鼓動は今も響く
『聖戦士ダンバイン』は、単なるロボットアニメにとどまらず、異世界ファンタジーの先駆けであり、人間の業と戦争の虚無を描き切った重厚な作品である。その映像表現、哲学的なストーリー、そして登場人物たちの苦悩と希望は、今なお多くのアニメファンの記憶に深く刻まれている。
たとえ当時の玩具販売には成功しなかったとしても、その表現に込められた“本質”は、時代を超えて語り継がれる価値があると言えるだろう。
●あらすじ
■ 目覚めの地は異界、バイストン・ウェル
物語は、現代日本に暮らす青年・ショウ・ザマが突如として異世界「バイストン・ウェル」に転移させられる場面から始まる。この世界は、中世ヨーロッパ風の文化を持ち、空を滑空する巨大な昆虫型兵器「オーラバトラー」が戦場を支配する戦乱の地。バイストン・ウェルでは、“オーラ力”と呼ばれる精神エネルギーが物理法則に干渉する現象として一般的に知られており、特に地上から来た人間には強大なオーラ力が秘められているとされていた。
ショウはその強大なオーラ力を見込まれ、覇権を狙う領主ドレイク・ルフトの軍に取り込まれてしまう。ドレイクは表向きこそ秩序の維持を掲げていたが、裏では各地の王族や国々を征服し、世界を武力で統一しようと目論んでいた。無垢なショウは最初、何も知らぬまま命令に従い、ダンバインと呼ばれるオーラバトラーで戦場に身を投じていく。
■ 揺れる忠誠、芽生える反抗心
戦いを重ねる中でショウは、自らが加担している戦争の本質を次第に理解し始める。ドレイク軍がもたらすのは平和ではなく支配と暴力であり、その背後には数多くの犠牲が生まれていたのだ。彼は次第にドレイクのやり方に疑問を抱き、ある戦闘をきっかけにドレイク軍から離反する決意を固める。
そんな彼が出会うのが、反抗勢力の一人である青年ニー・ギブン。ニーはバイストン・ウェルに古くから根付く王国「ナの国」の守護者的存在であり、独裁に抗う意志を持って戦っていた。ショウはニーの理想に共感し、彼の仲間として反ドレイク陣営に加わる。ここからショウの戦いは、「命令のための戦争」から「信念のための戦争」へと大きく転換していく。
■ 激突する想いと運命、交錯する聖戦士たち
ショウの前に立ちはだかるのが、黒い鎧に身を包んだ謎の騎士バーン・バニングス。彼もまた地上から召喚された人間であり、ドレイク軍の中でも指折りのオーラバトラー使いだった。かつては志を同じくしていたショウとバーンだが、信じる正義の違いから幾度も激突することになる。
また、物語の鍵を握る存在として、神秘的な王女シーラ・ラパーナが登場する。彼女はナの国を統治する若き指導者であり、オーラの本質に精通する存在。ショウは彼女の導きによって、オーラ力の使い方だけでなく、人の生き方そのものに対しても成長していくこととなる。
物語が進むにつれ、各地に眠っていたオーラマシンや技術が次々と発掘され、戦いはより苛烈さを増していく。仲間たちの死、裏切り、そして地上世界への扉が開かれる――運命の歯車は容赦なく回転し、誰もが抗えない巨大な流れへと飲み込まれていくのだった。
■ 世界は再び交わる――戦火、地上へ
物語の後半、大きな転機が訪れる。ドレイクの野望は異世界にとどまらず、現実世界への侵略にまで及ぶ。彼はオーラバトラーを用いて地上へ進軍し、世界中の都市に戦火を広げ始める。東京の上空に昆虫型兵器が飛来し、近代兵器と中世の魔導技術が交錯する異常事態が巻き起こる。現実と幻想が交わるこのカオスの中で、ショウたちの闘いもまた新たな段階に突入する。
この段階で新たに登場するのが、可変機構を備えた新型機「ビルバイン」だ。ショウの新たな相棒として彼を支え、機体の性能も精神力と完全にリンクしている。ビルバインを得たショウは、かつてない力を手にしながらも、最後の戦いへ向けて苦悩と決意を抱えて突き進んでいく。
■ そして誰もが終焉を迎える――魂をかけた最後の一撃
ショウ、バーン、ニー、シーラ、そして幾多の仲間たち。彼らは自らの意志と信念を胸に、オーラ力の極限に到達しながら、最後の決戦に挑む。だがその戦いは、勝者を決める単純なものではなく、世界全体を巻き込んだ大崩壊の序曲であった。
オーラ力が臨界点を超えたとき、バイストン・ウェルと現実世界をつなぐ扉は閉じ、戦士たちの魂は次元の狭間へと消えていく。ショウは最後まで命をかけて戦い抜き、その存在は人々の記憶に深く刻まれることとなった。
●登場キャラクター・声優
●ショウ・ザマ
声優:中原 茂
東京都武蔵野市出身の18歳の青年。モトクロスに情熱を注ぐ日々を送っていたが、ある日突然、異世界バイストン・ウェルへと召喚される。当初はドレイク・ルフトの配下として戦うが、次第にその野望に疑問を抱き、反旗を翻す。オーラバトラー「ダンバイン」の操縦者として戦場を駆け抜け、後に新型機「ビルバイン」を託される。仲間との絆や自身の信念を胸に、数々の困難に立ち向かう姿が描かれる。
●チャム・ファウ
声優:川村万梨阿
小柄な妖精「ミ・フェラリオ」の一員で、ショウの旅の同行者。無邪気で愛らしい性格ながら、時には戦況を左右する重要な役割を果たす。ショウとの掛け合いは物語に軽妙なリズムを加え、彼の心の支えとしても欠かせない存在となっている。
●マーベル・フローズン
声優:土井美加
アメリカ・テキサス州出身の18歳の大学生。強い正義感と行動力を持ち、バイストン・ウェルに召喚された後は、ギブン家の一員として戦う。オーラバトラー「ダーナ・オシー」などを操縦し、戦場での活躍を見せる。ショウとの出会いを通じて、彼の成長を支え、やがて深い絆で結ばれていく。
●ニー・ギブン
声優:安宅 誠
ギブン家の長男であり、オーラ・シップ「ゼラーナ」の艦長。ドレイク・ルフトの野望に立ち向かうため、仲間たちを率いて戦う。冷静沈着な指揮官でありながら、仲間思いの一面も持ち合わせている。ショウやマーベルと共に、バイストン・ウェルの未来を切り開くため奮闘する。
●キーン・キッス
声優:高田由美
ギブン家に仕える家臣の娘で、まっすぐな性格の持ち主。オーラ・バトラーの支援機「ウイング・キャリバー」などの操縦を担当し、戦場でのサポート役として活躍する。ニーに対して淡い想いを抱きつつも、仲間たちと共に戦い抜く姿が描かれる。
●ショット・ウェポン
声優:田中正彦
アメリカ出身の科学者で、異世界バイストン・ウェルに召喚された地上人の一人。彼は地上での挫折を経て、バイストン・ウェルで自身の野望を実現しようとする。オーラ・バトラーの開発に携わり、その技術力でドレイク・ルフトの軍事力強化に貢献するが、次第に独自の支配を目論むようになる。その結果、彼の行動はバイストン・ウェル全体を混乱に陥れる原因となる。彼の物語は、技術と権力の危うい関係を象徴している。
●バーン・バニングス
声優:速水奨
ドレイク軍の騎士団長として登場する若き騎士。誇り高く、戦士としての名誉を重んじるが、主人公ショウ・ザマとの戦いに敗れたことで自信を喪失する。その後、「黒騎士」として再登場し、復讐心に燃える姿を見せる。彼の変貌は、敗北と再起、そして人間の内面の葛藤を描いており、物語に深みを与えている。
●トッド・ギネス
声優:逢坂秀実
アメリカ空軍出身のパイロットで、ショウ・ザマと共にバイストン・ウェルに召喚される。地上では明るく社交的な性格だったが、異世界での戦いを通じて次第に変化していく。彼は自らの野心と過去のトラウマに苦しみながらも、戦士としての道を歩む。その姿は、人間の成長と変化、そして戦争の影響を象徴している。
●ガラリア・ニャムヒー
声優:西城美希
ドレイク軍に仕える女性騎士で、勇敢で冷静な戦士。彼女は戦場での活躍だけでなく、敵対するショウ・ザマとの交流を通じて、次第に自らの信念と向き合うようになる。その過程で、彼女の内面にある葛藤や人間性が描かれ、物語に深い感情をもたらす。
●ゼット・ライト
声優:立木文彦
地上から召喚された電子技術者で、ショット・ウェポンの後にバイストン・ウェルに到着する。彼はオーラ・バトラーの制御技術やオーラ・コンバーターの開発に貢献し、バイストン・ウェルの技術革新を支える。彼の存在は、技術と倫理、そして異世界における地上人の影響を考察する上で重要な役割を果たしている。
●ジェリル・クチビ
声優:大塚智子
アイルランド出身のジェリル・クチビは、地上からバイストン・ウェルに召喚された22歳の女性戦士です。ドレイク軍に所属し、オーラマシン「レプラカーン」を操縦して戦場を駆け巡ります。彼女は強い自尊心と闘志を持ち、戦いの中で次第に冷酷さを増していきます。その変貌は、彼女が戦争という過酷な環境に適応しようとする姿勢の表れとも言えるでしょう。
●ミュージィ・ポー
声優:横尾まり
ミュージィ・ポーは、アの国出身の女性で、リムル・ルフトの音楽教師を務めていました。高いオーラ力を持つ彼女は、科学者ショット・ウェポンに見出され、戦士としての道を歩みます。当初は穏やかな性格でしたが、戦いを重ねるうちに好戦的な一面を見せるようになります。ショットへの一途な愛情と、戦士としての使命感の間で揺れ動く彼女の姿は、物語に深みを与えています。
●シーラ・ラパーナ
声優:高橋美紀
ナの国の若き女王、シーラ・ラパーナは、冷静で知性的なリーダーとして描かれています。彼女は、バイストン・ウェルの平和を守るため、戦士たちを支援し、時には自らも戦場に赴きます。その毅然とした態度と、民を思う優しさは、多くの人々の心を動かしました。
●リムル・ルフト
声優:色川京子
ドレイク・ルフトの娘であるリムル・ルフトは、17歳の少女です。父親からは溺愛される一方で、母親からは政治の道具として扱われるなど、複雑な家庭環境で育ちました。彼女は、ニー・ギブンとの恋愛や、父親の野望に翻弄されながらも、自らの意思で行動しようと努力します。その純粋さと強さは、視聴者の共感を呼びました。
●エレ・ハンム
声優:佐々木るん
ミの国の王女であるエレ・ハンムは、13歳という若さながら、霊力と呼ばれる特殊なオーラ力を持ち、未来を予見する能力を有しています。彼女は、祖父フォイゾン・ゴウの後を継ぎ、ラウの国の女王として即位します。戦乱の中で、彼女は自らの使命を果たすため、戦場に赴き、最後は壮絶な最期を遂げます。その勇敢な姿勢は、多くの人々に感動を与えました。
●ルーザ・ルフト
声優:火野捷子
バイストン・ウェルのアの国を支配するドレイク・ルフトの妻であり、彼の野望を陰で支える存在。しかし、彼女の真の目的は、夫や娘をも利用して自らの権力を拡大することにありました。クの国の王ビショット・ハッタとの密かな関係を築き、ドレイク亡き後の実権掌握を目論む冷酷な策略家として描かれています。娘リムルに対しても愛情を示すことはなく、彼女を人質として利用するなど、目的のためには手段を選ばない非情さを持ち合わせています。最終的には、自らを「全ての混乱の元」と断じたリムルを射殺し、その直後にニー・ギブンによって討たれるという悲劇的な最期を迎えました。
●ビショット・ハッタ
声優:曽我部和行
クの国の若き国王であり、ドレイク・ルフトの野望に協力する形で登場します。彼はルーザ・ルフトとの密かな関係を持ち、ドレイクの死後にバイストン・ウェルの支配権を握ることを目指していました。一見すると忠実な同盟者のように見えますが、内心ではドレイクを信用しておらず、彼を排除する機会を窺っていました。その野心と裏切りの精神は、物語の中で複雑な人間関係と権力闘争を生み出す要因となっています。
●ドレイク・ルフト
声優:大木正司
アの国の地方領主からバイストン・ウェル全土の支配を目指す野心家。地上から召喚した地上人やオーラ・バトラーの力を利用し、他国への侵略を進めます。彼は自らの行動を「善」と信じて疑わず、周囲の忠告や反対意見にも耳を貸さない頑固さを持ち合わせています。しかし、物語が進むにつれて、彼の野望が家族や部下たちとの関係を崩壊させ、最終的には自らの破滅を招くこととなります。その過程で、彼の人間性や信念の揺らぎが描かれ、視聴者に深い印象を与えます。
●主題歌・挿入歌・キャラソン・イメージソング
●オープニング曲
曲名:「ダンバイン とぶ」
歌唱:MIO(後のMIQ)
作詞:井荻 麟(いおぎ りん)
作曲:網倉 一也
編曲:矢野 立美
■ 楽曲の世界観と構造的な魅力
『ダンバイン とぶ』は、テレビアニメ『聖戦士ダンバイン』の幕開けを飾る主題歌として制作され、作品の戦闘美学と異世界ロマンを凝縮したようなエネルギッシュなナンバーです。テンポの速いビートに乗せて、オーラバトラーに乗り込む主人公たちの高揚と決意が音楽として可視化されるような仕上がりになっています。
楽曲の構成は明確に三部に分かれ、序盤の引き込むような歌い出し、力強いサビの畳み掛け、そして再び戻る間奏といった起伏ある展開が印象的です。リスナーにまるで戦場の熱気を伝えるような臨場感を持って迫ってきます。
■ 歌詞の内容とその詩的構造
井荻麟による歌詞は、富野監督らしい観念性と戦士としての孤独な使命感が混在しています。
「恐れるな 俺の心」
「悲しむな 俺の闘志」
これらのフレーズは、まさに戦士が己を律する儀式のようなものであり、内なるオーラ力の発現に繋がっているかのようです。作品の根幹を成す“オーラバトラー”というロボット兵器の名称を歌詞にあえて直接使わず、「戦士」「アタック」などの抽象語で構成することで、聴く者に普遍的な「闘いの象徴」として響かせることに成功しています。
また、繰り返される「アタック!」という掛け声は、聴く者の戦意を鼓舞し、日常生活でも自分を奮い立たせる象徴的なフレーズとして多くの視聴者に印象づけられました。
■ ボーカル表現とサウンドの力強さ
MIO(現・MIQ)のボーカルは、当時のアニメソング界においては特異な存在でした。ハスキーかつ芯のある声質で、感情の抑揚が非常に豊か。特にサビ部分の「アタック!アタック!」と力強く繰り返す箇所では、まるで戦場に響く咆哮のような迫力が宿っており、聴き手の血を沸き立たせます。
編曲を担当した矢野立美のアプローチも見事で、ブラスセクションの強烈なアクセントや、エレキギターによる疾走感が、まさに“飛翔するオーラバトラー”の姿を想起させるように構築されています。
■ 視聴者の反応と評価
1980年代前半のアニメ主題歌としては、群を抜いて“戦士の叫び”が凝縮された名曲として、当時の若者たちに絶大な支持を得ました。特に男児層には、「この歌を聴くと自分が何かに立ち向かえる気がする」といった声が多く寄せられ、アニメを見ていなかった層にも曲単体で認知されていたのが特徴的です。
現在に至ってもアニソンフェスティバルやライブイベントで盛り上がる楽曲の一つとして、MIO自身が「魂の歌」と語るように、ファンにとっては特別な存在となっています。
●エンディング曲
曲名:「みえるだろうバイストン・ウェル」
歌唱:MIO(後のMIQ)
作詞:井荻 麟(富野由悠季)
作曲:網倉 一也
編曲:矢野 立美
■ 幻想と郷愁が溶け合う音楽的ビジョン
オープニングとは対照的に、このエンディングテーマは深い叙情と内省に満ちています。サウンドはシンセサイザーとストリングスが織り成す幻想的な世界観で構成され、聴く者を異世界バイストン・ウェルの霧に包まれた森や神秘の湖へと誘います。
楽曲のリズムは比較的ゆったりとしており、一日の終わりを静かに受け止めるような穏やかな終曲的性格を備えています。戦いを描いた物語の中で、唯一“人間の内側”に優しく寄り添ってくる存在――それがこのエンディングです。
■ 歌詞の内容と精神世界の描写
「赤と黄色の 眠り忘れる ときめきでした」など、色彩と記憶をテーマにした詩的表現が並び、まるで詩集の1ページをめくるような感覚になります。
この楽曲の核となっているのは、「見えない世界が確かに存在する」というメッセージです。井荻麟は、現実に生きる私たちの中にも“バイストン・ウェル”のような理想郷があると信じ、それを歌に込めています。楽曲の終盤の「のぞけます」という余韻あるフレーズが、その哲学的メッセージの帰結点ともいえます。
■ ボーカルの表現力と内なる声
MIOの歌声は、この楽曲ではまるで“語りかけるような抑制された美しさ”を纏って響きます。彼女はオープニングで見せた燃えるようなパワーとは一転し、繊細で透き通るような音色で、聴く者の記憶に静かに染み込んでいくのです。
矢野立美の編曲は、シンプルでありながら心象風景を巧みに描き出しており、MIOの声を際立たせる絶妙なバランスが取られています。
■ 視聴者の反応と時を越えた評価
放送当時の視聴者にとって、この楽曲は一日のアニメの終わりを告げる“余韻”の象徴でした。特に子供たちの中には、「この歌を聞くと切なくなる」「不思議な気持ちになる」と感じた者も多く、作品の幻想的なテーマ性が見事に音楽でも体現されていると好評でした。
近年では、「大人になって改めて聴くと涙がこぼれる」「この曲でバイストン・ウェルという言葉が特別な意味を持った」といったコメントも多く見られます。アニメソングを越えた“人生の回想歌”として、深い愛着を持っている人が少なくありません。
●挿入歌
曲名:「青のスピーチ・バルーン」
歌唱:小出広美
作詞:三浦徳子
作曲:網倉一也
編曲:矢野立美
■ 楽曲のイメージと構成美
『青のスピーチ・バルーン』は、『聖戦士ダンバイン』の重厚な世界観のなかでひときわ異彩を放つ、繊細でロマンチックな挿入歌である。物語の激動のなかで、ふと訪れる静寂な時間――そんな瞬間に流れるこの楽曲は、戦乱に巻き込まれた若者たちの淡い感情、言葉にならない想いを象徴している。
タイトルにある“スピーチ・バルーン”とは、漫画などで登場人物のセリフを表す吹き出しのこと。ここでは、それがまるで“心の内を浮かべる青い風船”のように比喩的に用いられており、言葉にならない想いを空に浮かべて誰かに届けたいという願望が込められている。
冒頭の静かな旋律から始まり、サビに向かって少しずつ感情が膨らんでいく構成が秀逸で、聴く者の心の奥を優しく震わせる。
■ 歌詞の内容とその深層にある情感
この曲の歌詞は、思いを寄せる相手に気づいてもらえない少女の視点で綴られている。
「あの日あなたに 逢ったけど あなた、私に 気づかない」
この導入部分だけで、すでに“すれ違い”の切なさが色濃く描かれている。その後も、「青のスピーチ・バルーン 欲しいの 愛のことばを いっぱいつめた」と続き、言葉では伝えられない胸の内を、空に浮かぶ青い風船に詰めて届けたいという少女らしいイメージが展開される。
そして歌詞の中では「そばにいるのに ふれられない」「呼んでも声が とどかない」などの表現が繰り返され、恋における“距離感”と“無力さ”を叙情的に表している。
まるで現実と夢の狭間で揺れ動くひとりの少女の心象風景が、そのままメロディに溶け込んでいくような詩世界である。
■ 小出広美の歌い方とその表現力
本楽曲を歌う小出広美は、アイドル出身というイメージを超えた、確かな表現力と感情の起伏を持ち合わせている。彼女の透明感ある声質は、感情の波を表に出しすぎず、むしろ抑制された哀しみとしてリスナーの内面に染み入る。
特に、サビでの「いっぱいつめた…」という語尾の弱さやかすれ具合に注目したい。感情を吐き出すのではなく、そっと呟くようなその歌声は、まるで夜空を見上げて溜息をつく少女のように、儚く、美しい。
矢野立美による編曲もまた絶妙で、主旋律の邪魔をしないように配置されたシンセのアルペジオや、淡く儚いストリングスが、まるで水面に浮かぶ月明かりのように情景を補完している。
■ 視聴者の感想と反響
当時この楽曲が使用された場面では、敵と味方の戦いの合間や、キャラクター同士の感情がすれ違うシーンなどに挿入されることが多く、作品全体の中で感情を調律する“緩衝材”のような役割を果たしていた。
視聴者からは、「ダンバインの中で最も少女的で抒情的な歌」「この曲が流れると一気に心が沈み、物語の深さを感じさせられる」といった感想が多く寄せられている。また、リアルタイムで視聴していた世代の中には、「この歌を聴くと、あの頃の自分の初恋を思い出す」と懐古的な声も。
現在に至るまで、『青のスピーチ・バルーン』は“戦いのドラマ”の中に織り込まれた“少女のモノローグ”として、特別な存在感を放っている。
●挿入歌
曲名:「水色の輝き」
歌唱:小出広美
作詞:三浦徳子
作曲:網倉一也
編曲:矢野立美
■ 楽曲のイメージと表現
『水色の輝き』は、『聖戦士ダンバイン』の世界において、“傷ついた心を癒やす光”のような位置づけにある楽曲である。戦乱と絶望のなかでも、かすかな希望と優しさが確かに存在しているというメッセージを、透明感のある旋律と共に静かに届けてくれる。
“水色”という色彩は、日本人の感性において「清らか」「憂い」「再生」を象徴する。そしてこの歌は、その水色に“光”を宿すことで、傷ついた人の内面をそっと照らす存在になっている。
ピアノとシンセを中心に構成されたサウンドは柔らかく、聴く者の心に波紋のように広がっていく。
■ 歌詞の構造と情景描写
本作の歌詞は、一貫して“再会”と“癒し”を主題にしている。
「忘れた頃に ドアを叩いてあなたのところに やってゆきます」
という出だしから始まり、まるで時を超えて届く手紙のような、静かな祈りのような印象を受ける。
また、「Sweet little dream from Water Color」という英語フレーズが繰り返される点も特徴的で、夢の中にしか存在しないような理想や優しさを、そっと託しているかのようである。
この「from Water Color」という言葉の選び方が極めて詩的で、“絵の具で描いた夢のような現実”という不確かで儚いイメージを強く印象づける。
■ 小出広美の歌唱とその余韻
小出広美は、この曲では非常に抑制されたトーンで歌い上げており、全編を通して感情を爆発させるような表現は見られない。むしろ、ささやきかけるような柔らかさが心に染み込む。
音を伸ばす場面でもビブラートを強調するのではなく、微細な揺れでニュアンスを出すスタイルで、聴き手に静かな余韻を残す。特に「水色の輝きが 見えるでしょう」という最後のフレーズは、リスナーの心にそっと光を灯すような締め括りとなっている。
矢野立美の編曲も、シンセとストリングスの透明なレイヤーにより、浮遊感と非現実性を強調し、まさに“夢のような現実”を音楽として体現している。
■ 視聴者の印象と現在の評価
『水色の輝き』は、「戦士の物語の中に流れる癒しのバラード」として、ファンの記憶に深く刻まれている。挿入タイミングとしては、キャラクターの心情が交差する穏やかな場面や、悲劇的展開の直後など、視聴者に“感情のクールダウン”を与える演出として使用されていた。
ファンの声としては、「この歌が流れると自然と涙が出る」「戦いの中で人間らしさを思い出させてくれる」といった、非常に感情的な感想が多い。また、アニメ楽曲としてだけでなく、純粋なバラードとして聴き続けているリスナーもいる。
●アニメの魅力とは?
■ 異世界「バイストン・ウェル」という独創的な舞台設定
『聖戦士ダンバイン』の舞台は、地上とは異なる次元に存在する幻想的な世界「バイストン・ウェル」。ここでは妖精や騎士、魔法に似た力「オーラ力」が存在し、ヨーロッパ中世の雰囲気が色濃く漂っている。この世界に、現代日本の若者・ショウ・ザマが突然召喚されるという導入からして、従来のSFロボットアニメとは明確に異なる。
このバイストン・ウェルは、霧がかった森、重厚な石造りの城、飛竜が飛び交う空といったビジュアル面での魅力はもちろん、複雑な社会構造や封建的な価値観がリアリティを伴って描かれており、視聴者を深く引き込む世界観を形成している。
■ 異形のロボット「オーラバトラー」が織りなす迫力の戦闘
『ダンバイン』に登場するロボットは、昆虫や甲殻類をモチーフとした有機的なフォルムを持つ「オーラバトラー」。金属的なメカとは一線を画し、筋肉のように収縮する構造や羽根を使った飛行など、生物的な動きをするのが特徴である。これにより、戦闘シーンには独特の重厚感とスピード感がもたらされている。
また、オーラバトラーはパイロットの精神力=「オーラ力」によって駆動するため、戦闘の勝敗は単に技術や機体性能だけでなく、感情や精神状態にも左右される。この設定により、バトルに人間ドラマが強く絡むという深みが加わっている。
■ 主人公・ショウ・ザマの変容が映す人間の葛藤
物語の中心人物であるショウ・ザマは、元はモトクロスを愛する日本の高校生。しかし異世界に召喚され、戦争に巻き込まれるうちに、次第に「聖戦士」としての自覚と葛藤を抱えていく。その心の揺れや成長は、リアルで繊細に描かれ、単なるヒーローではない等身大の青年像として共感を呼ぶ。
とくに物語後半にかけて、敵味方の善悪の境界が曖昧になる中で、彼が下す選択やその代償には重みがあり、視聴者の心に深く残る。
■ 多層的に絡むキャラクターたちの心理戦
『ダンバイン』には、個性豊かなキャラクターが多数登場する。反ドレイク勢力のリーダー・ニー、戦場で友情と恋愛を交錯させるマーベル・フローズン、冷酷ながらも哀しみを秘めたバーン・バニングスなど、それぞれの立場と信念がぶつかり合い、複雑な人間関係を織りなしている。
とりわけ敵側のキャラクターにもしっかりとした動機と背景が与えられており、一筋縄ではいかない「正義」と「悪」の揺らぎが描かれている点が、視聴者に思考の余白を与えている。
■ 富野由悠季の演出が生む生々しいリアリズム
本作を語るうえで欠かせないのが、監督・富野由悠季の存在だ。彼が得意とする「リアルな戦争」「死の必然性」「登場人物の非情な運命」は、本作でも存分に発揮されている。主要キャラの容赦ない退場や、視聴者の予想を裏切る展開は、見る者に強烈な印象を残す。
また、「バイストン・ウェル」の美術設定や、アニメーションの色彩設計にも富野のこだわりが感じられ、空想世界でありながらどこか現実味を感じさせる。
■ アニメ史に残る衝撃のラストとその余韻
『ダンバイン』は、最終話で全登場人物の運命が劇的に変転し、多くが命を落とすという、アニメ史上に残る衝撃的な結末を迎える。その終焉は、単なる物語の幕引きではなく、現実世界と異世界の境界を超えた意味を持っており、視聴者に深い余韻と問いかけを残す。
このエンディングは当時賛否両論を巻き起こしたが、今なおファンの間では語り草であり、本作の評価を不動のものとする要因の一つとなっている。
■ 放送当時の反響と今なお続く人気
放送当初はそのシリアスな内容や複雑な展開ゆえに、子ども層にはやや難解とされることもあったが、アニメファンや若年層を中心に高い評価を受けた。特にその思想性とドラマ性、そして作画の独自性は、アニメ業界内でも話題となった。
その後もLD化、DVD-BOX化、Blu-ray化と、繰り返しメディア展開されており、世代を超えて新たなファンを獲得し続けている。また、スピンオフ作品『New Story of Aura Battler DUNBINE』や各種書籍などの展開も、作品の世界観を補完する形で人気を博している。
■ 終わりに――戦争と人間性を描いた異色の傑作
『聖戦士ダンバイン』は、単なるロボットアニメという枠を超え、人間の心の闇や希望、そして生と死の意味を深く問いかける重厚な作品である。異世界という舞台と有機的なロボット、複雑な人間関係、そして想像を絶する結末。
これらすべてが一体となって織りなされる本作は、まさに“見る者を選ぶアニメ”でありながら、その選ばれた者たちの心には強く、永く残り続ける。
今なお語り継がれる本作の魅力は、アニメファンにとっての一つの到達点とも言えるだろう。
●当時の視聴者の反応
■ 異世界ファンタジーとリアルロボットの融合
『聖戦士ダンバイン』は、異世界「バイストン・ウェル」を舞台に、現代日本から召喚された主人公ショウ・ザマが、オーラバトラーと呼ばれる生体的なロボットを操り戦う物語です。昆虫をモチーフにしたメカデザインや、中世ヨーロッパ風の世界観は、当時のロボットアニメとしては異色の存在でした。
■ 放送当時の視聴者の反応
放送初期の頃から『ダンバイン』は子供たちの間で人気が出なかった。ダンバイン関連の玩具・商品は作ってもあまり売れず、スポンサー企業は業績の低迷に苦しんだ。その玩具の売上不振を打開するため、アニメの物語の中では、ウイング・キャリバーからオーラバトラーへの変形を売りにした新主役メカ「ビルバイン」の投入と、物語の舞台をバイストン・ウェルから現実世界へと移行させ、派手なロボットバトルを前面に打ち出すことなど物語の路線変更が図られた。しかし、そんな努力もむなしく、メインスポンサー企業であるクローバーが倒産してしまった。アニメ本放送のシーズンの途中で、メインスポンサーの企業が倒産するのは前代未聞・異例のことであった。そこで、急遽、本作のプラモデルを販売していたバンダイが「聖戦士ダンバイン」のメインスポンサーとなり、新スポンサーにトミー(現・タカラトミー)を迎えて、「ビルバイン」の玩具販売を請け負ってもらうことになった。こうして、『聖戦士ダンバイン』はアニメ番組の打ち切り危機から逃れたのである。
■ メディアと書籍での評価
放送当時のメディアでは、『聖戦士ダンバイン』の独特な世界観やメカデザインに対して賛否が分かれました。一部の評論家は、リアルロボットアニメとしての新たな試みを評価し、異世界ファンタジーとの融合を革新的と捉えました。しかし、他方では、物語の複雑さやキャラクターの多さが視聴者にとって理解しづらいとの指摘もありました。
書籍においては、後年の再評価が進み、『聖戦士ダンバイン』の意義や影響について詳述されています。特に、富野由悠季監督の作品群の中での位置づけや、異世界ファンタジーとリアルロボットの融合という点での先駆性が強調されています。
■ 現代の視点からの再評価
近年では、インターネット上のレビューやブログなどで、『聖戦士ダンバイン』の再評価が進んでいます。特に、異世界転生ものの先駆けとしての位置づけや、独特の世界観、キャラクターの魅力などが再評価のポイントとなっています。
例えば、あるブログでは、「ダンバインは40年前に放送されたものだから、中身はしょぼいかなと思ってみてみたら、そうでもなかった。映像も綺麗で今でも十分におもしろい」との感想が述べられています。
また、別のレビューでは、「面白い。面白すぎる。個人的な感想を言えば、トミノ作品では、ダンバインとザブングルが断トツだと思う」との評価があり、富野作品の中でも特に高く評価されています。
■ 結論
『聖戦士ダンバイン』は、放送当時には視聴率や玩具の売上不振などの課題を抱えていましたが、その独特な世界観やメカデザイン、物語の深さなどから、後年において再評価が進んでいます。異世界ファンタジーとリアルロボットの融合という試みは、現在のアニメ作品にも影響を与えており、その意義は大きいと言えるでしょう。
●声優について
■ ショウ・ザマ(声:中原茂)
物語の主人公であるショウ・ザマは、地上からバイストン・ウェルに召喚された青年です。彼はオーラバトラー・ダンバインを操り、戦いに巻き込まれていきます。中原茂さんは、当時のインタビューで「作品も実験的ですがキャスティングも実験的です」と富野監督から言われたことを振り返り、「あの時僕にとって世界は『聖戦士ダンバイン』を中心に回っていました」と語っています 。中原さんは、真面目な青年役を得意とし、端正な声でショウ・ザマの成長や葛藤を見事に表現しました 。また、共演した川村万梨阿さんとは『聖戦士ダンバイン』での共演をきっかけに親交を深め、現在でも「茂ちゃん」「万梨阿ちゃん」と呼び合う仲だそうです 。
■ チャム・ファウ(声:川村万梨阿)
チャム・ファウは、妖精のような姿をしたキャラクターで、ショウ・ザマのパートナーとして活躍します。川村万梨阿さんにとって、チャム・ファウ役は声優デビュー作でした。元々はアニメ雑誌の取材で富野監督と出会い、オーディションを受けるよう誘われたことがきっかけで声優の道に進んだそうです 。チャム・ファウの愛らしさや元気さを、川村さんは見事に表現し、視聴者の心をつかみました。
■ マーベル・フローズン(声:土井美加)
マーベル・フローズンは、地上からバイストン・ウェルに召喚された女性で、ショウ・ザマと共に戦う仲間です。彼女は強い意志と優しさを併せ持ち、物語に深みを与える存在でした。マーベル・フローズン役では、彼女の落ち着いた声と演技力がキャラクターの魅力を引き立てました。
■ ニー・ギブン(声:安宅誠)
ニー・ギブンは、地上から召喚された技術者で、オーラバトラーの開発に関わる人物です。彼は戦士としての役割も果たし、物語の中で重要なポジションを占めています。安宅誠さん(現・あたか誠)は、ニー・ギブン役を通じて、職人気質でありながらも人間味あふれるキャラクターを演じました。彼の演技は、ニー・ギブンの複雑な内面を巧みに表現し、視聴者に強い印象を残しました。
■ キーン・キッス(声:高田由美)
キーン・キッスは、ギブン家に仕えるキッス家の娘で、明朗快活な性格の持ち主です。彼女は、忠義と恋心の間で揺れ動きながらも、戦士として成長していきます。高田由美さんの演技は、キーンの純粋さと強さを見事に表現しており、視聴者の心に深く残ります。彼女の物語は、戦場での苦悩や仲間との絆、そして最終的な自己犠牲といったテーマを通じて、視聴者に多くの感動を与えました。高田さんの繊細な演技が、キーンの内面を豊かに描き出しています。
■ ショット・ウェポン(声:田中正彦)
ショット・ウェポンは、地上から召喚された科学者で、オーラ・マシンの開発に携わる重要な人物です。彼の冷静で理知的な性格は、田中正彦さんの落ち着いた声によって強調され、物語に深みを与えています。ショットは、技術者としての矜持と戦争の現実との間で葛藤しながらも、自らの信念を貫きます。田中さんの演技は、ショットの内面の複雑さを巧みに表現し、視聴者に彼の人間性を感じさせます。
■ バーン・バニングス(声:速水奨)
バーン・バニングスは、ドレイク軍の騎士団長であり、優れた剣術とオーラ力を持つ戦士です。彼は、ショウ・ザマとの戦いを通じて、名誉と復讐の狭間で苦悩します。速水奨さんの力強い声は、バーンの誇り高き性格と内面の葛藤を見事に表現しています。バーンの物語は、敗北と再起、そして最終的な自己犠牲というテーマを通じて、視聴者に深い感動を与えました。速水さんの演技が、バーンの複雑な感情をリアルに描き出しています。
■ トッド・ギネス(声:逢坂秀実)
トッド・ギネスは、地上から召喚されたアメリカ人で、ショウ・ザマのライバル的存在です。彼は、野心と嫉妬に駆られながらも、次第に人間的な成長を遂げていきます。逢坂秀実さんの演技は、トッドの感情の起伏を巧みに表現し、視聴者に彼の変化を感じさせます。
■ ガラリア・ニャムヒー(声:西城美希)
ガラリア・ニャムヒーは、ドレイク・ルフトの配下として登場する女性騎士であり、オーラバトラー「バストール」のパイロットとして活躍します。彼女は、騎士としての誇りと忠誠心を持ちながらも、地上界に召喚された際には、その価値観に揺さぶられることになります。地上での生活やゼット・ライトとの交流を通じて、騎士としての使命と個人としての幸せの狭間で葛藤する姿が描かれています。声優の西城美希さんは、ガラリアの強さと内面の繊細さを見事に演じ分け、視聴者に深い印象を与えました。特に、地上での生活に心が揺れるシーンでは、その感情の変化が丁寧に表現されており、多くのファンから高い評価を受けています。
■ ゼット・ライト(声:立木文彦)
ゼット・ライトは、地上から召喚された技術者であり、オーラバトラーの開発において重要な役割を果たします。彼は、ショット・ウェポンと共にオーラマシンの開発に携わりますが、その功績がショットに奪われる形となり、不満を抱えながらも技術者としての使命を全うしようとします。立木文彦さんが演じるゼットは、寡黙で実直な性格が特徴であり、その演技は視聴者に深い共感を呼び起こしました。特に、ガラリアとの交流や、戦場での決断など、彼の内面の葛藤が丁寧に描かれており、多くのファンから支持を受けています。
■ ジェリル・クチビ(声:大塚智子)
ジェリル・クチビは、地上から召喚された第二陣の地上人の一人であり、オーラバトラー「レプラカーン」のパイロットとして登場します。彼女は、強い野心と自己中心的な性格を持ち、次第にそのオーラ力が暴走し、ハイパー化という形で狂気に陥っていきます。大塚智子さんが演じるジェリルは、その狂気と冷酷さを見事に表現し、視聴者に強烈な印象を残しました。特に、ハイパー化によって巨大化し、最終的に自滅するシーンは、彼女の野心の果てを象徴するものとして、多くのファンの記憶に刻まれています。
■ ミュージィ・ポー(声:横尾まり)
ミュージィ・ポーは、バイストン・ウェル出身の女性であり、オーラバトラー「白ズワァース」のパイロットとして登場します。彼女は、妖精のような外見と神秘的な雰囲気を持ち、戦場においても独特の存在感を放っています。横尾まりさんが演じるミュージィは、その独特の声質と演技で、ミュージィの神秘性を際立たせています。彼女の登場シーンや戦闘シーンでは、その美しさと強さが融合し、多くの視聴者を魅了しました。
■ シーラ・ラパーナ(声:高橋美紀)
ナの国の若き女王シーラ・ラパーナは、清廉で気品あふれる存在として描かれています。彼女の登場は物語中盤からですが、その存在感は圧倒的で、ファンからは「シーラ様」と敬称を付けて呼ばれるほどの人気を誇ります。声を担当した高橋美紀さんは、本作が声優デビュー作であり、デビュー当時のエピソードとして、声帯の大きさが普通の人の半分しかないと医師に言われながらも、独自の発声方法を工夫し、役を演じきったことが知られています。
■ リムル・ルフト(声:色川京子)
ドレイク・ルフトの娘であるリムル・ルフトは、父の野望に翻弄されながらも、自らの意思で行動する強さを持ったキャラクターです。彼女の内面の葛藤や成長は、物語に深みを与えています。声を担当した色川京子さんの繊細な演技が、リムルの複雑な心情を見事に表現しています。
■ エレ・ハンム(声:佐々木るん)
ミの国の王女であり、後にラウの国の女王となるエレ・ハンムは、霊力と呼ばれる特殊能力を持ち、未来の予見や悪意の察知などで仲間たちを支えます。彼女の最期は、ハイパー化した黒騎士バーンの悪意のオーラを霊力で中和させるために生命力を使い果たし、13年の生涯を閉じるという感動的なものでした。
■ ルーザ・ルフト(声:火野捷子)
ドレイク・ルフトの妻であり、リムルの母であるルーザ・ルフトは、夫の野望に加担する冷酷な女性として描かれています。彼女の存在は、物語における悪の象徴とも言えるでしょう。声を担当した火野捷子さんの迫力ある演技が、ルーザの冷徹さを際立たせています。
■ ビショット・ハッタ(声:曽我部和行)
クの国の若き国王ビショット・ハッタは、ドレイク・ルフトの野望に協力する形で登場します。彼の野心と行動は、物語の緊張感を高める要素となっています。声を担当した曽我部和行さん(現:曽我部和恭)の演技が、ビショットの若さと野心を巧みに表現しています。
■ ドレイク・ルフト(声:大木正司)
アの国の領主であり、物語の主要な敵役であるドレイク・ルフトは、地上人をバイストン・ウェルに召喚し、オーラバトラーを用いて世界征服を企む人物です。彼の冷酷な野望と策略は、物語全体の緊張感を高めています。声を担当した大木正司さんの重厚な演技が、ドレイクの威圧感を際立たせています。
■ ナレーション(声:若本紀昭)
物語全体を通してナレーションを担当した若本紀昭さん(現:若本規夫)は、その独特の低音ボイスで作品の世界観を深めています。また、劇中ではアレン・ブレディやドワ・グロウなどのキャラクターも演じており、多彩な演技力を発揮しています。
●イベントやメディア展開など
■ 玩具展開と模型誌での露出
放送と同時期に、バンダイからオーラバトラーのプラモデルが発売されました。特に主役機「ダンバイン」や新型機「ビルバイン」は人気を集め、模型誌『ホビージャパン』や『モデルグラフィックス』でも特集が組まれ、作例や改造記事が掲載されました。これにより、模型ファンやメカデザインに興味を持つ層からの支持も獲得しました。
■ 音楽と主題歌の展開
オープニングテーマ「ダンバインとぶ」やエンディングテーマ「みえるだろうバイストン・ウェル」は、MIO(現・MIQ)が歌唱を担当し、作品の世界観を彩りました。これらの楽曲は、当時のアニメソングとしても高い評価を受け、音楽面でも作品の魅力を広げる要素となりました。
■ OVAや小説での展開
放送終了後も、『聖戦士ダンバイン』の世界観はさまざまな形で展開されました。1988年には、OVA『New Story of Aura Battler DUNBINE』が制作され、テレビシリーズの後日談が描かれました。また、富野由悠季自身による小説『リーンの翼』や『オーラバトラー戦記』なども発表され、バイストン・ウェルの物語は広がりを見せました。
■ ゲームやパチンコでの展開
1990年代以降、『聖戦士ダンバイン』はゲーム作品にも登場し、特に『スーパーロボット大戦』シリーズでは主要な登場作品として人気を博しました。また、パチンコやパチスロ機としても展開され、新たなファン層の獲得に成功しました。
■ 40周年記念展と現在の展開
2023年には、放送40周年を記念して「聖戦士ダンバイン40周年展 ~出現 渋谷上空~」が開催されました。会場では、原画や設定資料の展示、フォトスポットの設置、記念グッズの販売などが行われ、多くのファンが訪れました。 また、同年には、YouTubeのサンライズチャンネルにて、オープニングとエンディング映像を現代の技術で再制作した動画が公開され、話題となりました。
●関連商品のまとめ
■ 映像ソフト(VHS、DVD、Blu-ray、OVA)
『聖戦士ダンバイン』の映像ソフトは、VHS、DVD、Blu-rayと時代に応じてリリースされてきました。特に注目すべきは、1988年に発売されたOVA『New Story of Aura Battler DUNBINE』です。これは、TVシリーズの後日談に当たる全3話の外伝ストーリーで、700年後のバイストン・ウェルを舞台に、新たな聖戦士シオン・ザバが登場します。TVシリーズとは異なるスタッフによって制作され、独自の世界観が描かれています。また、2024年には、神風動画とバンダイナムコフィルムワークスによる実験動画「AURA BATTLER DUNBINE SIDE R」が公開され、新たな解釈とアレンジで作品の魅力を再発信しています。
■ クローバー製プラモデル(主力商品)
本作のスポンサーであり、ロボットアニメと密接な関係を築いていた玩具メーカー・クローバーは、本作でも数々のプラモデルを中心に展開を行いました。
● オーラバトラーシリーズの立体化
最大の特徴は、「ダンバイン」や「ビルバイン」などの“昆虫的外観”を持つロボット=オーラバトラーたちを、非常に個性的なフォルムで立体化した点にあります。特にダンバイン本体の薄羽、脚部の関節構造、丸みのあるフォルムは、従来の角ばったメカとは異なり、メカニカルな印象と生物的な曲線の融合が目指されました。
プラモデルラインナップ例:
1/72スケール ダンバイン(定価:300円~500円程度)
1/72スケール ビアレス
1/72スケール ビルバイン(変形ギミックあり)
1/72スケール ズワウス
1/72スケール レプラカーン など
■ 超合金・ポピニカ系玩具(バンダイ製)
バンダイはクローバーとは異なり、アニメ終了後に商品を補完する形で動きました。特に、後年「スーパーロボット超合金」「ロボット魂」などでリメイク展開が活発化しますが、放送当時のラインナップは限定的でした。
DXビルバイン(変形機構搭載): 主に劇中後半に登場する「ビルバイン」を中心とした商品。飛行形態に変形可能な構造は、トランスフォーマーやマクロスの影響を感じさせ、当時の“変形ブーム”に乗ったものでした。
小型ミニフィギュアセット: ソフビやPVCでできたキャラクターやオーラバトラーのミニフィギュアもバンダイから少数販売され、ガシャポンや景品流通を通じて子供たちの手に届く仕組みも整えられていました。
■ 書籍・ムック・設定資料集
メカ設定が非常に細かく作られていた本作は、設定資料集やムック本も人気商品となりました。
『ロマンアルバム・エクストラ 聖戦士ダンバイン』(徳間書店)
キャラクターの相関図、オーラバトラーの図解、脚本家インタビュー、美術設定などが網羅されており、ファン必携の資料とされています。
アニメージュ文庫版小説(著:富野由悠季)
テレビ版とは異なる展開を見せるノベライズは、アニメ終了後のファンの欲求を満たすもので、原作と並行するもう一つの物語世界として評価されています。
ストーリーブック/絵本
小学生向けの絵本も複数刊行され、物語の要約と挿絵を交えた入門書として活用されていました。
■ 音楽商品(レコード・カセットテープ)
音楽面も本作の大きな魅力の一つであり、商品化にも力が入っていました。
● シングルレコード(EP盤)
「ダンバインとぶ」/「みえるだろうバイストン・ウェル」(キングレコード)
主題歌とエンディング曲がセットになったEP盤は、MIO(MIQ)が歌う力強いボーカルが人気を呼び、アニメファンのみならずアニソンファンにも広く浸透。
● サウンドトラックアルバム
BGM集(LP/後にCD化)
渡辺宙明が手がけたオーケストラ調のBGMは、当時のリアルロボットアニメの中でも異色の存在感を放っており、劇的な展開を彩った旋律の数々は、ファンの間で高評価を得ました。
■ カード・シール・文具・雑貨類
子供層向けには、文房具・カード・シール類も数多く展開されました。
スナック菓子のおまけシール(ロッテ系)
ビックリマンの前哨とも言えるこのジャンルでは、オーラバトラーのイラストを用いたシールやカードが付属したスナック菓子が登場。現在ではほとんどが廃棄されており、現存数が極端に少ないためコレクター間で高騰しています。
下敷き・筆箱・ノートなどの文具
サンライズ作品共通の展開である、学習雑貨への商品化も当然行われました。とくにダンバインのメインビジュアルを用いた下敷きやクリアファイルなどが学校で話題となりました。
■ ガレージキット・再商品化(90年代以降)
1980年代当時は立体商品の完成度に限界があったため、1990年代以降はガレージキットやバンダイの新ブランドによるリメイク展開が本格化しました。
B-CLUB ガレージキット
ビアレス、レプラカーンなどの“量産機”の精巧なガレキがファン層を中心に流通。組み立て・塗装前提の商品であり、上級者向けの商品として評価されました。
ロボット魂(バンダイ)
2000年代以降に展開された高可動フィギュアシリーズでも、ビルバインなどが商品化され、往年のファンや新世代層にリーチしました。
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