
【中古】ドリームキャストソフト July
【メーカー】:フォーティファイブ
【発売日】:1998年11月27日
【販売価格】:5,800円
【メディア】:GD-ROM
【ゲームジャンル】:アドベンチャーゲーム
●概要
■ 神秘と予言が交錯する異色のSFドラマ
1998年11月27日、ドリームキャストの発売とともに登場したアドベンチャーゲーム『July』は、ハードローンチ時の目玉タイトルとして静かな注目を集めた一本である。本作は、世界的に話題となった“ノストラダムスの大予言”をベースにした物語を背景に、2人の異なる主人公を操りながら進行する重厚なテキストアドベンチャーである。
プレイヤーは、刻一刻と終末へと向かう1999年7月を舞台に、人々の思惑と未来に迫る“何か”の正体を探っていく。その緊張感と濃密な人間ドラマ、そして個性的なキャラクタービジュアルが生み出す世界観は、後のADV作品にも影響を与える存在となった。
■ ゲームの基本構造とシステム:ダブル主人公制の真価
『July』の最大の特徴は、2人の主人公「高村誠」と「ヨシュア」の視点を自由に切り替えながら進行するシナリオ構成にある。高村誠は新聞記者、ヨシュアは諜報機関に属するエージェントという立場で、それぞれが異なる視点から“世界の異変”に迫っていく。
高村誠パート:市井の目線から事件を追い、人々の不安や陰謀を探るドラマ重視の物語。
ヨシュアパート:超常的な現象や国家レベルの秘密に関わるスパイスリラーの要素が強い展開。
プレイヤーは任意のタイミングで主人公を交代できるため、同時多発的に起きる出来事を違う視点から補完しながら理解していく、いわば“対称構造”のストーリーテリングとなっている。選択肢による分岐やマルチエンディング構造も採用されており、プレイヤーの判断が世界の結末を左右する。
■ 登場キャラクターとビジュアルの魅力:150人が紡ぐ人間模様
本作に登場するキャラクター数は、なんと150人以上。子どもから老人、善人から悪役まで幅広い人物が登場し、それぞれに立ち絵が用意されている点も特筆に値する。
キャラクターデザインは、独特の作風で知られるトニーたけざき氏と、美麗で艶のある画風で知られるアニメーター梅津泰臣氏が担当。両者の個性がぶつかり合いながらも、絶妙なバランスで調和しており、SF作品ながらもどこか人間味にあふれた人物像が印象的に描き出されている。
トニーたけざきキャラ:コミカルで記号的、庶民的なキャラクターが多く、空気を和らげる存在。
梅津泰臣キャラ:ミステリアスで洗練された人物像が多く、物語に緊張感と美的緻密さをもたらす。
登場人物たちが持つ小さなエピソードや背景設定も緻密で、それぞれがストーリーに少しずつ影響を与えていく様は、まさに群像劇と呼ぶにふさわしい構成である。
■ 世界設定と物語の核:「1999年7月の恐怖」は実現するのか?
ゲームの大きな軸として据えられているのは、“ノストラダムスの予言”──特に有名な「1999年7の月、空から恐怖の大王が来る」という文句で知られる終末予言である。
この予言を基に、『July』では1999年の世界が徐々に不可解な現象に包まれていく様子が描かれていく。高村やヨシュアが遭遇する事件は、失踪者の続出、不可解な地震、都市で発生する幻覚、謎の教団など、徐々に現実世界が崩壊していく不安感に満ちている。
単なるオカルトではなく、科学的な陰謀説や政治的背景も絡み合い、リアリティのある世界観構築がなされている。
一見すると独立している事件が、実は一つの“真実”に繋がっていたという構造も、プレイヤーの好奇心を強く刺激する。
このように、『July』は「恐怖の大王」の正体に迫るスリルと、人類の“未来”に対する哲学的な問いかけが同居する、非常に野心的なシナリオを展開している。
■ 映像演出と音楽:静けさの中の緊張感
ドリームキャスト初期のタイトルということもあり、CG演出こそ控えめではあるが、その代わりに「静けさ」を重視した演出が際立っている。BGMは控えめに挿入され、代わりにSEや環境音が丁寧に配置されており、日常の中に潜む異変を際立たせる演出となっている。
急に差し込まれるサイレン音や、不気味な無音状態がプレイヤーの感覚を研ぎ澄ませる。
特定のシーンでは効果的にアニメーションが使われ、ビジュアルノベルのような演出効果を発揮。
音楽自体も、エレクトロニカとピアノをベースにしたアンビエントな曲調が中心で、未来の崩壊と静かな絶望感を象徴するような印象を残す。
■ ゲームとしての評価と意義:ADVファンのための記憶に残る一作
発売当初の『July』は、派手なアクションやCGを備える他のローンチタイトルと比べると、地味な存在であったことは否めない。しかし、静かに語られる物語の深さと、アドベンチャーゲームとしての完成度の高さは、コアなファンから高い評価を受けた。
テキスト量が非常に多く、読み応えがあるため、推理ゲームや小説形式のADVを好む層には非常に好まれた。
ノストラダムスという一過性の話題を題材にしながらも、普遍的なテーマ(人間の信仰、科学、運命)を扱っている点が評価された。
また、150人という圧倒的なキャラクター数とその描写の丁寧さは、のちにノベルゲームやサウンドノベル形式の作品群における群像劇のフォーマットに一定の影響を与えたとも言われている。
■ 終わりに:見過ごされた名作にもう一度光を
『July』は、その時代にしか成立し得なかった「終末思想」を真正面から描き出した、まさに90年代末の空気感を凝縮したようなゲームである。ノストラダムスの予言が社会現象となった時代背景、2人の視点が交錯する物語構造、そして150人のキャラが織りなす運命の糸。
華やかなドリームキャスト初期タイトル群の中で、ひっそりと語り継がれてきた『July』。もし未プレイであれば、この静かで重厚なドラマに身を委ねてみてほしい。そして、もし記憶の彼方に眠っているのであれば、今一度その物語を思い出してみてはいかがだろうか。
●ゲームの魅力とは?
■ 二重構造のシナリオが導く「真実」への追求
『July』最大の注目ポイントは、二人の主人公を切り替えて進めるというユニークな構成にある。プレイヤーは、ジャーナリスト・高村誠と、情報機関のエージェント・ヨシュアという、まったく異なる視座を持つキャラクターを操作し、それぞれが辿る異なる道筋を通じて、真実の断片を繋いでいく。
この「ダブル視点システム」は、ただの選択肢ではない。高村のルートでは“市井の視点”から怪異や疑念に触れ、ヨシュアのルートでは“裏社会の動き”を目の当たりにする。この対比が、物語に多層的なリアリティを与えており、プレイヤーは次第に「世界が終わる」というテーマの中に深く引き込まれていく。
魅力の核は、“見落とされた真実に気付く感覚”。両者のルートを交互に進めることで、初めて全体像が浮かび上がる作りになっており、そのパズルがハマったときの快感は格別だ。
■ ノストラダムスの大予言を軸に描かれる終末思想
90年代後半、日本社会は“ノストラダムスの大予言”に不安と興奮を抱いていた。本作はその社会的文脈を巧みに取り込み、終末的世界観をリアリティをもって描いている。
単なるオカルトでは終わらせず、事件の背後には政治的な陰謀、科学的な暴走、そして宗教的カルト組織の影などが浮かび上がる。つまり『July』は、“1999年7月の恐怖”を現実に起こるかもしれない社会崩壊として描き、その不気味さと緊張感でプレイヤーを魅了する。
現実の不安を物語に転化した力強さが本作の特筆すべき点であり、「もし1999年に本当に何かが起きていたら?」という想像を鮮やかに視覚化している。
■ 150人以上のキャラクターによる重厚な群像劇
通常のアドベンチャーゲームでは考えられない規模で、本作には150人以上の登場人物が存在する。それぞれのキャラクターに立ち絵が用意されており、背景も性格も多様であるため、誰もが生きているような“リアルな存在感”を持っている。
この膨大なキャラ群が描く物語は、単なる脇役ではない。それぞれの思惑や葛藤が複雑に絡み合い、大きな流れを構成する一部となっている。まるで、一冊の分厚い群像劇小説を読んでいるような感覚が味わえるのだ。
恋愛、裏切り、信仰、失踪、謀略──人間ドラマのすべてが詰まっている
立ち絵の演出も多彩で、表情の変化や衣装の違いが場面に応じて変わるため、臨場感が高い
■ トニーたけざき×梅津泰臣のキャラクター演出力
視覚面でも、『July』は他のADV作品とは一線を画している。キャラクターデザインには、異なる作風を持つ二人のクリエイターが参加している。
トニーたけざき:独特のユーモアと温かみを備えたタッチで、コミカルで親しみやすい人物像を創出。
梅津泰臣:アニメ界で高い評価を得るスタイリッシュな描線で、クールで魅力的な人物像を構築。
この二人のテイストが共存することで、作中の人物たちは実にバリエーション豊かで、それぞれの個性がより際立つように設計されている。視覚的にも退屈しない演出が常に展開され、ゲームの没入感を高める要素となっている。
■ 音楽と演出がもたらす深い余韻
音楽と効果音もまた、『July』の魅力を語る上では外せない。BGMは基本的に静かな曲調で構成されており、登場人物の声がないことを逆手に取り、環境音や音楽が“語り”を担うように作られている。
雨音、サイレン、電話のベル…日常の中に潜む異常性を強調
サスペンスシーンでは、ピアノや弦楽器の緊張感ある旋律がプレイヤーの心を締めつける
また、重要なシーンでは演出として簡易的なアニメーションも挿入されることがあり、そこが“ただのテキスト”に終わらせないドラマ性を醸し出している。
■ ゲーム性を超えた「読む力」への挑戦
アドベンチャーゲームである『July』には、アクション性は存在しない。その代わり、膨大なテキストを読み進め、登場人物の発言の裏を読み、伏線を繋げていくという「読む力」が問われるゲームである。
つまりこのゲームの醍醐味は、“情報を精査し、断片から真実を導く知的な快感”にある。プレイヤーが物語を追う「観察者」であると同時に、世界の未来を決める「選択者」にもなっていく。
読書好き、思索好き、ミステリー好き──そうした層にはたまらない体験が待っている。
■ ユーザーの声と再評価の動き
発売当初、『July』はドリームキャストの派手なラインナップの中にあって、やや地味な存在であった。しかし、ネット掲示板やファンサイトなどでは「隠れた傑作」として評価が高まり、以下のような感想が散見されるようになった。
「分岐が丁寧で、繰り返しプレイに耐えうる構成」
「群像劇としての完成度が異様に高い」
「ドリキャスADVの中でも文学的な重みがある」
「ノストラダムスという設定に頼らず、きちんとSFとして成立している」
また近年では、ドリームキャスト再評価の流れの中で、『July』もまた「時代の雰囲気を正確に切り取った記録作品」として注目される機会が増えている。
■ エピローグ:再び訪れる“7月”にもう一度、この物語を
人類の運命を予言と共に見つめ、記者とスパイという二つの目を通して浮かび上がる“真実”を追う『July』。それは1999年という時代の空気をそのまま封じ込めた、貴重なゲーム的記録でもある。
ドリームキャストというハードの持つ挑戦的な精神と共に生まれた本作は、時代を経ても色褪せることはない。もう一度“7月”がやってきた時、このゲームを起動してみてほしい。そこには、かつて味わったはずの不安、混乱、そして“人間”の強さと脆さが、静かに語られているはずだ。
●感想や評判
■ 静かに始まり、じわじわと心を侵食する物語体験
1998年末、ドリームキャストのローンチ直後にひっそりと姿を現したアドベンチャーゲーム『July(ジュライ)』は、ゲームファンの間で密やかな話題を呼んだ。発売元はフォーティファイブ、ジャンルは「近未来SFサスペンス」と銘打たれていたが、実態は非常に文学的で哲学的なテキストアドベンチャーだった。
多くのプレイヤーが語る第一印象は「静けさ」と「不穏さ」。ノストラダムスの大予言という1999年問題に彩られた終末の空気感が、作品全体に重く漂い、画面から伝わる緊張感が独特だった。
SNSや掲示板(当時はまだ草の根的存在だったが)では、「このゲーム、何か変わってる」「ただのアドベンチャーじゃない」といった言葉が飛び交い、プレイした人に深い余韻を残していった。
■ キャラクター数150人。圧倒的な描写量に圧倒されたユーザーの声
『July』が注目された大きな要因の一つが、登場人物の数だった。実に150人以上のキャラクターが登場し、しかも全員に立ち絵が存在する。しかもそのデザインは、『機動戦艦ナデシコ』の梅津泰臣氏と、『トニーたけざきのガンダム漫画』で知られるトニーたけざき氏という2人の個性派が手がけており、アニメファンからの注目度も高かった。
ゲームレビュー掲示板には「この数のキャラをきちんと描き分けているのは凄い」「人物ごとの表情のニュアンスが細かくて、読み物として面白い」といった感想が多く、ストーリーを読み進めるうちに“群像劇”のような味わいにハマるプレイヤーが続出した。
一方で、「キャラが多すぎて整理がつかない」「ストーリーの核心に関係のない人物も多いのでは?」という声もあり、ボリューム感と情報量の多さは賛否を分けた。
■ 評価の分かれ目:ゲーム性の希薄さと“読み物としての魅力”
当時のゲーム雑誌に掲載されたレビューでは、『July』の評価ははっきりと分かれていた。
たとえば、『ドリマガ(Dreamcast Magazine)』では、「ゲームというより小説的。読書を楽しめる人にはハマるが、アクションや謎解きを求める層には不向き」といった記述が目立つ。
つまり、評価の高い部分は物語・演出・ビジュアルの作り込みであり、低評価だったのはインタラクティブ性の薄さだった。
プレイヤーの感想でも、「選択肢が少なくて、どこまで自分が関与できているのか分からない」「読んでいるだけで、自分で進めてる感覚が薄い」といったものが見られる一方、「ストーリーを追うのが目的なら問題ない」「むしろ読ませることに集中した構成が良い」と好意的な声もあった。
■ 雑誌インタビューやライターからの称賛も:静かな支持
『July』はメディア露出こそ少なかったが、限られたメディアでは一定の評価を受けていた。特に『Theプレイステーション』系やゲーム文化系同人誌では、「アドベンチャーという形式を用いながら、小説的な構築美をここまで突き詰めた作品は稀少」といった評価がなされていた。
また、発売後しばらくしてから行われた、開発スタッフのインタビュー記事(同人誌『Dreamcast Frontier』vol.2掲載)では、以下のようなコメントが残されている。
「プレイヤーが“選択する”のではなく、ただ“見守る”という体験を意図して作った。選択肢で物語を動かすのではなく、世界の中に浸ってもらう構造にしたかった」
このような設計思想は、のちの“ノベルゲー”や“ビジュアルノベル”に通じる先駆的な考え方であり、ゲーム批評家の間では「早すぎた実験作」として再評価されつつある。
■ 一部の熱狂的ファンが作った考察と伝説
『July』には、作品内で明確に語られない“謎”が数多く仕掛けられていた。
たとえば「なぜこの人物がこのタイミングで消えたのか」「背景に映る奇妙な記号の意味は?」など、テキストの間に潜む伏線に対して、一部のプレイヤーが考察を深めていった。
2000年代前半にはファンサイトが複数立ち上がり、考察ページには数万字に及ぶテキストが投稿されていたこともある。現在ではほとんどが閉鎖されたが、「July 考察」でGoogle検索するとアーカイブが一部見つかる。
熱心なファンの間では、「『July』はノストラダムス予言の再解釈であり、人間の心理と社会の構造の寓話だ」とする見方や、「2人の主人公の視点の交差は、ゲームの進化系メタ表現だった」とする解釈などが交わされていた。
●イベントやメディア展開など
■ トニーたけざき×梅津泰臣 起用記念トークイベント開催
発売の約1か月前、1998年10月末に東京・中野ブロードウェイ内の小劇場で、『July』のキャラクターデザイン担当であるトニーたけざき氏と梅津泰臣氏を招いたトークイベントが実施された。
このイベントは、当時としては珍しく“ゲーム紹介よりもクリエイターの思想を語る”形式を採っており、ファン層もアニメ・マンガ・ゲームを横断して集まるという興味深い光景が見られた。
トニー氏は「150人のキャラデザインを描き分けるのは、実はトライアスロン並の過酷さだった」と語り、会場は笑いと共感に包まれたという。
イベント終了後には限定ポストカードの配布が行われ、プレミアム感もあいまってその日以降、中野界隈のショップでは『July』の予約が急増することとなる。
■ ドリームキャスト・ローンチ連動展示 in セガ本社ロビー
セガはドリームキャスト発売にあたり、本社ロビーを用いた“ローンチソフト合同展示”を企画していた。『バーチャファイター3tb』や『ゴジラ・ジェネレーションズ』と並んで、『July』もこの展示に参加。
他タイトルが試遊可能なアーケード筐体やビジュアル派手なパネルを用意するなか、『July』だけは“読む”という体験に特化した縦型ディスプレイ+ヘッドホンでの没入型紹介という異質な展示スタイルだった。
これは「周囲の喧騒と切り離された世界観」を体験してもらうための演出で、展示に訪れたメディア関係者の間では「この静けさこそがJuly」と逆に印象を強く残したという。
■ ゲーム雑誌連動 企画記事と開発者コラム展開
派手なCMはなかったが、ゲーム雑誌とのコラボレーション展開は積極的に行われた。
『週刊ドリームキャストマガジン』1998年11月号では、全3ページにわたって『July』の設定資料と、世界観解説を特集。
『電撃Dreamcast』では、ライター座談会形式の「Julyを読む読書会」企画を実施。アドベンチャーゲームを“物語を読むメディア”と捉える文芸寄りのアプローチで取り上げられ、一定の読者層の支持を得た。
『ファミ通DC』では、発売週に短期連載形式で「“1999年の予感”」という特集が組まれ、その中で『July』が象徴的作品として紹介された。
さらに、開発ディレクターのインタビューコラム「視点の交錯」が連載され、「人間は未来に希望を抱けるのか」というテーマをゲームにどう込めたかが語られ、話題を呼んだ。
■ 秋葉原ラオックスで行われた限定体験会
発売2週間前、東京・秋葉原のラオックスゲーム館にて、『July』の限定体験会が開催された。
このイベントでは、作中の印象的なシーンの一部を抜粋した“短編モード”が用意され、10分程度のプレイ体験が可能だった。周囲には特製ポスターとコンセプトイラストが展示され、通りすがりの客の視線を引いた。
体験者アンケートでは、「思っていたより地味だけど雰囲気がいい」「読書みたいだった」「声優の演技が本格的」との声が多く、ラオックス店内ではその日以降、予約数が急増したという。
なお、このイベントでは抽選でトニーたけざき描き下ろしのB5サイズ色紙が当たるキャンペーンも実施された。
■ テレビCMの不在が逆に話題に?
多くのローンチタイトルがTVCMを打ち出す中で、『July』はテレビ広告を一切行わなかった。
この「CMを打たない」という戦略は、開発者いわく「メディアの大音量ではなく、囁きのような声で届く物語にしたい」という意図があったという。
これが功を奏し、一部のファンからは「幻のゲーム」「知ってる人だけが手に取る作品」としてコアな支持を得る結果となった。
当時のドリームキャスト掲示板やセガBBSでも、「あのゲーム、何なの? CMどころか公式も静かすぎる…」という“逆に気になる”口コミが発生し、少数精鋭のプロモーションが成功した好例となった。
●中古市場での現状
■ Yahoo!オークション
現在、Yahoo!オークションでは『July』の出品数は少なく、過去180日間での落札件数は6件程度と希少なタイトルとなっています。落札価格は350円から1,430円まで幅があり、平均価格は658円程度です。特に帯付きやハガキ付きの完品は、コレクターからの需要が高く、比較的高値で取引される傾向があります。
■ 駿河屋
中古ゲームショップの駿河屋では、2025年4月現在、『July』の中古価格は930円(税込)で販売されています。新品定価が6,380円であることを考えると、約85%の値下がりとなっています。また、他のショップでは350円からの価格設定も見られ、状態や付属品の有無によって価格に差が出ています。
■ 状態や付属品による価格差
『July』の中古価格は、商品の状態や付属品の有無によって大きく変動します。帯付きやハガキ付きの完品は、コレクターからの需要が高く、比較的高値で取引される傾向があります。一方、ディスクのみや動作未確認品は、安価で取引されることが多いです。
●本や雑誌での評価
★『Julyオフィシャルガイドブック』
出版社:コーエーテクモゲームス
発売年:1999年2月1日
内容:本書は、『July』の公式攻略本として、ゲームの全体像を解説しています。150人以上の登場キャラクターの詳細なプロフィールや、物語の鍵となるキーワード、世界観の設定などを網羅。また、ゲーム内の選択肢やエンディング分岐の詳細な解説も含まれており、プレイヤーが物語を深く理解するための手助けとなる一冊です。
★『ドリームキャストマガジン』
出版社:ソフトバンククリエイティブ
発売年:1998年~2001年
価格:420円(税込)
内容:ドリームキャスト専門のゲーム情報誌で、『July』の発売前後には特集記事やレビューが掲載されました。ゲームのストーリーやキャラクター紹介、開発者インタビューなどが含まれており、読者にとっては発売前の期待感を高める内容となっていました。
★『電撃ドリームキャスト』
出版社:メディアワークス
発売年:1998年~1999年
内容:『電撃ドリームキャスト』は、ドリームキャスト関連の最新情報やゲームレビューを掲載する雑誌で、『July』についても発売前の情報や特集記事が組まれていました。ゲームの世界観やシステム解説、開発者のコメントなどが掲載され、読者にとっては貴重な情報源となっていました。
★『ドリームキャストコンプリートガイドブック』
内容:ドリームキャストの全ソフトを網羅したガイドブックで、『July』もその中で紹介されています。ゲームの基本情報やパッケージ画像、簡単なレビューなどが掲載されており、ドリームキャストファンにとっては貴重な資料となっています。